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奇怪なシリーズと本命の敗因。
ナショナルズが修正したエースの癖。

posted2019/11/09 11:30

 
奇怪なシリーズと本命の敗因。ナショナルズが修正したエースの癖。<Number Web> photograph by Getty Images

ストラスバーグの癖が見抜かれていることに気づいたナショナルズのベンチ。勝敗を分ける大きなポイントだった。

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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 奇妙なワールドシリーズだった。いや、奇怪なシリーズと言い換えたほうが適切だろうか。7戦までもつれた2019年のシリーズで、最後に笑ったのはナショナルズだった。

 本命と目されていたアストロズは、一敗地にまみれた。第1戦と第2戦をホームのヒューストンで落としたときは、だれしも絶体絶命と思ったはずだが、つづく3試合、アストロズは敵地ワシントンで全勝した。

 これで3勝2敗。切り札ゲリット・コールはすでに2度の先発を終えたが、アストロズはジャスティン・ヴァーランダーとザック・グリンキーを残している。短期決戦に不安のあるタイプとはいえ、地元でふたりとも負けることはあるまい。そう予測した人は、けっして少なくなかったと思う。

 だが結果は、崖っぷちに追い込まれたナショナルズの2連勝だった。2019年のポストシーズンを通して、このチームは「負ければおしまい」の苦境から5度も息を吹き返したことになる。

この「大逆転」はそうそう見当たらない。

 ワイルドカードでは、ブルワーズのジョシュ・ヘイダーから勝ちをもぎ取った。

 NLDS(ナ・リーグ地区シリーズ)では、ドジャースに1勝2敗と追いつめられながら、リッチ・ヒルとクレイトン・カーショーを打ち崩した。

 そしてワールドシリーズでは、最後の最後に敵地で2連勝。これほど「大逆転」のイメージが強いチームは、そうそう見当たらない。

 よく引き合いに出されるのは、1914年の「ミラクル・ブレーヴス」だ。

 この年、ナ・リーグのボストン・ブレーヴスは7月4日の独立記念日まで26勝40敗の成績で、最下位に沈んでいた。首位ニューヨーク・ジャイアンツには15ゲームの大差だ。ところが、後半のブレーヴスはまるで別のチームに生まれ変わった。7月6日から9月5日までの成績が41勝12敗。1909年から1912年まで4年連続で「100敗以上」を喫していたとは思えない快進撃で、そのままワールドシリーズも制したのだった。

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