スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
奇怪なシリーズと本命の敗因。
ナショナルズが修正したエースの癖。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2019/11/09 11:30
ストラスバーグの癖が見抜かれていることに気づいたナショナルズのベンチ。勝敗を分ける大きなポイントだった。
乱世の幕開けか、一過性の狂いか。
第6戦の序盤で、レンドンに対して無意味な守備シフトを布き、やらずもがなの点を与えたこと。第7戦の勝負どころで、ロビンソン・チリノスに下手なバントを命じて失敗したこと。同じく第7戦で、グリンキーの降板を急ぎすぎ、結果的にコール投入の機会を逸したこと。アストロズ敗退のポイントは、ほかにもいくつか考えられるが、もしナショナルズのベンチが、ストラスバーグの癖が見抜かれていることに気づかなかったら、勝敗の行方はどうなっていたかわからない。
いずれにせよ、7試合戦ってヴィジターチームが全勝というワールドシリーズは、史上初めてだった。これが乱世の幕開けとなるのか、それとも一過性の「狂った季節」として記憶されるのか。来季の蓋を開けてみなければ容易に予想はできないが、両軍の大黒柱だったストラスバーグとコールは、いずれも来季、FAの資格を得る。オフシーズンにはべらぼうな金が動き、情報も錯綜することだろう。球団の財力から見て、ストラスバーグはドジャース、コールがヤンキース(あるいはその逆)と予想する声は高いが、百鬼夜行の大リーグではなにが起こるかわからない。
冬の戦いからも、眼を離さないでおこう。