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サイ・ヤング賞投票の日本人記者語る。
勝利数より奪三振、そして説明責任。
posted2019/11/17 11:30
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
AFLO
今年もまた、全米野球記者協会シカゴ支部局長ポール・サリバン氏(シカゴ・トリビューン紙)から、ナショナル・リーグ(ナ・リーグ)のサイ・ヤング賞の投票を任された。5月のことだ。
全米野球記者協会各支部から任命された30名の記者が記名投票するサイ・ヤング賞は、メジャーリーグの最優秀投手賞であり、原則5名の選考委員が選出する日本プロ野球の沢村賞のように「先発完投型」の賞ではないので、救援投手が受賞することもある。
だから、沢村賞のような『15勝以上、防御率2.50以下、完投10試合以上、150奪三振以上』というような選考基準は存在しない。
とはいえ、ボストンを取材の拠点にしていた20年ぐらい前は、投手の主要タイトル3部門である勝利数、防御率、奪三振数が重要視されていたし、『ペナントレースを争ったチームに貢献した投手』という、投手自身の技量とは無関係の要素も、当時は考慮されていた。
それが今や、奪三振>防御率>>>>勝利数ぐらいの感覚で主要3部門の重みに違いが生まれており、チーム成績もあまり関係がなくなった。
セイバー系の数字を重視するように。
投票者によって多少の違いはあれども、そこにWHIP(四球と安打を出す確率)やクオリティ・スタート(QS=6回以上3失点以下)やその率、被OPS(被出塁率+被長打率)やK/BB(三振と四球の割合)といった比較的、認知度の高い数字が考慮されるようになった。
他にもERC(Component ERA=実際の失点に基づいた防御率ではなく、与四球と被安打数から算出される防御率)やDIPS(Defense Independent Pitching Statistics)=被本塁打や奪三振、与四死球、フライボールやゴロ、ライナーを打たれる確率など、捕手以外の野手の能力と無関係に算出されるセイバーメトリクス系の数字も参考にされるようになった。
私自身も、その1人である。