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元日本代表キッカー栗原徹が解説。
田村優のPG、新しい工夫と修正力。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byGetty Images
posted2019/10/19 20:00
ゴールの右サイドから蹴るときも田村から見て左向きにボールを倒すのが新しい工夫だという。
五郎丸はドライバー。田村は?
「五郎丸選手はズバリ、ドライバーですよ。身長も高いし、足のリーチもあるからドンと、パワーで持っていって飛距離も出る。田村選手の飛距離は世界で見ていくと、そこまで飛ぶほうじゃない。僕と同じ45mくらいがギリギリかなって感じています。クラブに置き換えれば3番アイアンのイメージ。
ただ、飛距離が出るからいいってわけじゃないんです。大切なのは精度。スコットランドの(グレイグ・)レイドローは極端に言うとピッチングウエッジ。40m届かないくらいですけど、かなり精度は高い。
日本で言えば、サントリーや日本代表で先輩だった永友洋司さんがレイドローに近いですね。要はキッカーの射程距離と確率を計算して、ゲームキャプテンがプレーを選択すればいいだけ。田村選手のキックは中距離までの精度が非常に高いし、今回のワールドカップを見ていても修正していく力もあるなって感じます」
田村は「キックの感覚」を持っている。
田村も五郎丸のように自分なりのルーティンを採用している。
歩数、助走の角度、手の位置、肩の向き……。ただ、本来はきっちり型を決めないほうが田村には向いているんじゃないかというのが栗原の私見である。「直接、今回のワールドカップとは関係ないという前提に立っていいなら」と話を進めていく。
「なぜルーティンが採用されるかと言えば、ミスしたときに修正しやすいからです。ただ、田村選手はキックの感覚というものをかなり持っているタイプに僕には見える。
僕がプレースキックを選手に指導するとき、ボールに背を向けて下がらせてポンと体を押して振り向かせて『そのまま蹴っちゃえ』というトレーニングをすることがあるんです。キックの感覚がある人なら、これが案外入る(笑)。
どんな状況でもゴールを通してしまえばいいだけのこと。これはルーティンそのものを否定しているわけではなくて、自分の感覚とルーティンをミックスさせていくほうが彼らしいキックを見ることができるんじゃないかとは思っています。あくまで個人的な意見ですけど」