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内山靖崇、17歳の挫折から10年後。
錦織圭や盛田名誉顧問も称える根性。

posted2019/10/04 19:00

 
内山靖崇、17歳の挫折から10年後。錦織圭や盛田名誉顧問も称える根性。<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

ダニエル太郎とともにATPツアー8強進出を果たした内山靖崇。日本テニスの底上げがなされている証拠の1人だ。

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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Hiromasa Mano

 東京オリンピックのためにリニューアルした会場のこけら落としとなる楽天オープンの高揚感は、錦織圭の欠場の発表で一気に萎んだ。しかし今、錦織不在というこの厳しい状況で期待しうる最高レベルの盛り上がりをキープしている。

 全米オープンを左肩のケガで途中棄権したノバク・ジョコビッチが、欠場の噂を吹き消して予定通り来日し、順調に勝ち進んでいることは最大の要因に違いない。しかしそれだけではない。この盛り上がりを周辺から支えたのは日本選手の活躍だった。

 26歳のダニエル太郎と27歳の内山靖崇、同学年のふたりが揃って準々決勝に駒を進めた。この大会で日本選手が2人ベスト8入りしたのは、まだ非公式戦だった1972年以来の快挙。それを、錦織抜きでやってのけたことが驚きだ。

ワイルドカードの幸運を生かした。

 127位のダニエルと136位の内山。今の立ち位置はほぼ同じだが、ツアー優勝経験があり、昨夏64位までランキングを上げたダニエルに対し、内山は今が自己最高位という上り坂にいる。

 ダニエルが本戦のワイルドカードを得て、内山が得たのは予選のワイルドカードだった。この差は、たった9つのランキングの差というよりは過去の実績の差だったと考えられる。

 しかも、もともと内山は予選のワイルドカードさえもらえておらず、本戦に欠場者が出たことによって、本戦のワイルドカードだった西岡良仁がワイルドカードなしで滑り込み、空いたワイルドカードの枠に予選ワイルドカードの添田豪が繰り上がり、余った予選ワイルドカードが内山に与えられたのだ。

 この運を生かし、予選を突破したばかりでなく本戦でも快進撃を見せた内山には、偶然ではない根性めいたものを感じる。その根性の源を探ろうとすると、ここまでに費やした長い年月とジュニア時代に早くも味わった<挫折>のことを思わずにいられない。

【次ページ】 IMGで挫折を味わった17歳の出来事。

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