テニスPRESSBACK NUMBER
内山靖崇、17歳の挫折から10年後。
錦織圭や盛田名誉顧問も称える根性。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2019/10/04 19:00
ダニエル太郎とともにATPツアー8強進出を果たした内山靖崇。日本テニスの底上げがなされている証拠の1人だ。
年内100位という目標も現実的。
コーチングというのは不思議なもので、何を言われるかではなく、誰に言われるか、なのだ。鈴木は同じ札幌出身で、自分のことを子供の頃から目にかけてくれていた大先輩。もちろんそのプレースタイルやキャリアを内山はよく知っている。そんな鈴木の言葉には説得力があった。それを確信し、もっともいい時期を迎えた内山を5つ年下の鈴木に託した増田の決断に、ここまでともに積み重ねてきた時間の重さを感じる。
今シーズンの内山は年初のブリスベンでベスト8入りし、ウィンブルドンで予選を突破。予選に挑戦すること15回目で初めてつかんだグランドスラム本戦の切符だった。これまでも何度か飛躍を予感させたことはあるが、最近の手応えはちょっと違うという。
「今年ははっきりとした結果が出ているので、自信もついてきましたし、トップ150に入れて年内100位という目標も現実的なものとして見えてきた」
VIP席の最前列には盛田氏の姿が。
もし内山がトップ100入りを果たせば、盛田ファンド生の男子としては錦織、西岡に次いで3人目。途中帰国組の中では初めてとなる。
内山の試合のときはいつも、VIP席の最前列に盛田正明さんの姿があった。その才能が最大に発揮される日を待ち望む人は少なくない。ウィンブルドンで予選突破したとき、錦織は「今回、それが一番うれしい出来事だったかもしれない」と自分のことのように喜んだ。
最後に、少し他の日本選手にも話を広げたい。先月35歳になった添田も、今大会の前半戦を盛り上げた功労者の1人といって間違いない。
1回戦で37位のヤンレナード・シュトルフに対して番狂わせを演じ、2回戦でジョコビッチには敗れたものの、終盤では質の高いラリー戦を繰り広げた。その添田も、自己最高の47位をマークしたのは27歳のときだった。
「19歳や20歳のときにうまくいかなくても、あきらめないでがんばってほしい」とジュニア世代にメッセージを送る。