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原辰徳インタビュー(1)「鳴かぬなら鳴くまで待たず選手を替える」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2019/09/09 11:00
インタビューは監督室で行われたが、機密事項が多いため、写真はNG。撮影はグラウンドやベンチで行った。
「選手が一体感を持ってやっていた」
――特に目立ったのは一、二軍の連係でした。開幕直後に吉川尚輝内野手がケガで離脱しましたが、その後を抜擢した若い選手が埋めて大きな戦力ダウンには繋がらなかった。
「山本(泰寛内野手)も良かったし、若林(晃弘内野手)も増田(大輝内野手)も頑張っている。外野手でも重信(慎之介)とかまだまだ生きのいい選手はいますよ。そこが出てくるということは、一体感があったんでしょうね、ファームとの。巨人には70名弱の支配下選手がいて、野手では40名弱の選手が一体感を持ってやっていたと思いますね」
――そこが今年の巨人の強みではないでしょうか?
「でも、そこは僕の中ではいつでもそういうチーム作りになるよね。悪くいうなら落ち着きのない野球なのかもしれないけど、やはり全員で戦う。調子の悪い人が出れば、5試合くらいは我慢できても、それ以上はもう我慢できない。鳴かぬなら、鳴くまで待つのではなく選手を替えていこうと。その中でいい面も出てくるし、逆にまだちょっと彼は早かったなというのもある。それがチームを動かすということだと僕は思いますけどね」
ホワイトボードを指差して語り出した。
――選手を使い切るということ?
「それは絶対! そこが僕らにこの選手たちで日本一を目指して欲しいという球団の考えでもあるわけですから。だから僕はいつもこれを見るんですよ」
こう語ると原監督は監督室の壁に掲げてあるホワイトボードを指差して語り出した。
「ここに貼ってあるのは支配下選手全員の名札です。黄色が左打者と左投手で、右打者と右投手が白。半半に色分けしているのがスイッチです。育と書いてあるのは育成の選手ですね。ここに全員の名前がある。これがチームのピースだよね。それが今どうなっている、こうなっている。ここにあるのがけが人でまだ使えない選手という風にね。これは毎日、見ますね。で、選手の現状というものを自分の中で把握しているつもりですね」
――選手の現状把握ができているから、入れ替えた若手を適材適所で使えている。
「8月28日に山本と山下(航外野手)を入れ替えて、山下は非常にバッティングのいい選手なので、中日戦(9月5日)では先発で使いました。ただ、一軍に上げた前日(8月27日)に勇人にアクシデントがあったので、もし勇人が使えない状況なら、思い切ってファーストで山下を使おうかなということも考えていた。そこで、山本をファームに下げました」