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原辰徳インタビュー(1)「鳴かぬなら鳴くまで待たず選手を替える」
posted2019/09/09 11:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Hideki Sugiyama
今年の巨人は強い。
3年連続で広島の天下が続いたセ・リーグ。しかし今季はペナントレース終盤の9月を迎えて、久々に巨人が首位を走る戦いが繰り広げられている。
オフには丸佳浩外野手らを獲得する大型補強を行う一方で、開幕するとエース・菅野智之投手の不振など決して万全ではない中で、4年連続で優勝から遠ざかっているチームを、優勝争いへと導いてきたのは昨オフに3度目の監督復帰を果たした原辰徳監督だった。
7月30日には史上13人目の監督通算1000勝を記録したその名将へのロングインタビューを3回にわたって掲載する。第1回は思い切った若手抜擢の背景を指揮官が語る。
感覚が「起きる」のかという不安。
――監督を退いて再びユニフォームを着る点では前回の2度目と同じですが、3度目の今回、実際にペナントレースを戦って監督として心境などの変化は感じますか?
「あったね。あった。1度目に監督を退いた後は自分にとって勉強だったし、必ずもう1度、あの戦いの場に戻るんだという気持ちの中での時間だったけど、2度目にユニフォームを脱いだ後は、自分の中では休息でしたから。まあリタイアとは言わないまでも、休んでいたんだから。
そういう意味で今回は色々な感覚を呼び起こさせないといけないわけですよ。前はどこか自分の体の中に、そういう感覚が起きたままでいた。それが完全に寝ているわけですから。それが起きるのか、という不安はありましたね」
――でも実際にグラウンドに立てば自然に蘇ってきた?
「そこは開幕してもずっと不安でしたよ。監督って一瞬の感情とか、一瞬の気持ちの高ぶりなんてダメなわけで、要は忍耐力だから。その高い気持ちを維持しなければいけない。まあ、僕から言わせると、(最初に監督就任の打診を)受けたのは(去年の)夏の終わりですよ。
そして秋、そこでしっかり(引き)受けて、秋季キャンプもやり、冬。そして春のキャンプをやって開幕して夏。それでもう秋にかかろうとしている。長いよ、そりゃ。それを持続した形でやるんだから。やっぱり継続した力というのはすごくエネルギーを使いますよ」