球道雑記BACK NUMBER
明大・森下と早大時代の小島和哉。
主将でエース、その効果と気苦労。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byRyotaro Nagata
posted2019/07/02 07:00
小島は浦和学院高で甲子園に出場し、早大を経て2019年にドラフト3位でロッテに入団した。
投手と野手の垣根を越えるため。
それぞれの係にリーダーとなるべき4年生が存在し、彼らを上手く巻き込んで、主将を中心としたピラミッド型のチームが、前年度を上回ろうと形成されていく。
それは大人の組織として完成形に近かった。そして小島が大学時代に狙ったのもまさにそこだった。自分以外の4年生を上手く巻き込んでいくことで、投手と野手の垣根を超えたチームを作ろうとしたのだ。
だからこそ彼らは大学3年秋のリーグ戦最下位タイから、1年後のリーグ戦で2位と巻き返し、最終節まで優勝争いをすることができた。
「以前までは、試合後のミーティングでも“ピッチャーはこう思うけど、野手はこう思う”という意見を素直に言える環境ではなかった。たとえばピッチャーはゼロに抑えられれば良いと思っているけれど、野手はもっとテンポ良くやってほしいと思っているとか、そういう食い違いがありました。それをミーティングの場では言わないで、陰で言ったりするのが自分は嫌だなと思ったんです。
それなら、せっかく自分がピッチャーで主将になったんだから、そこからまず変えよう。自分からどんどん言いたいことを言おうとも思いました。そういう意味でもお互いの大変さが徐々に分かるようにはなったと感じましたし、いい方向に繋がったのかなと思いますね」
捕手、内野手の主将がほとんどだが。
野球という競技において、ピッチャーが主将を務めること自体、稀である。
普段の練習、ゲーム中にどこか俯瞰的に物事を捉えられる「第2の監督」たる存在が必要と考えられてきたし、だからこそ、投手と野手の両方の意見を束ねられる捕手や、マウンドの投手に声をかけにいきやすい内野手が主将を務めるケースがわりと一般的とされてきた。
今回の全日本大学野球選手権に出場した27大学で見ても、捕手が主将を務めていたのは7大学、内野手が11大学と多い。
それでも小島や森下の例を考えると「投手が主将を務める」というのも案外悪くない。2人の成功が野球界に対する新たな提案になるかもしれない、とさえ思うのだ。