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エスパニョールを知る日本人に聞く。
中国人ウー・レイ獲得で何が変化?
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谷川良介Ryosuke Tanikawa
photograph byGetty Images
posted2019/06/29 11:30
![エスパニョールを知る日本人に聞く。中国人ウー・レイ獲得で何が変化?<Number Web> photograph by Getty Images](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/7/9/700/img_79e1674d6e7026f6cdc743fb0c684f81149163.jpg)
2019年1月にリーガの舞台へと渡ったウー・レイ。文字通りエスパニョールの救世主となった。
EL出場で中国ツアーが中止に。
プレーでの貢献も然ることながら、1人の中国人獲得で予想をはるかに超える利益、注目を引き寄せたとなれば、エスパニョールのアジア進出は今後も加速するはずだ。
「ウー・レイに続く中国人選手獲得も噂されています。現地記者によると、日本人や韓国人選手の名前も挙がっているとか。
実はこの夏、ウー・レイのおかげで中国ツアーが予定されていました。対戦相手はパリ・サンジェルマン。クラブとしても、中国まで行くならということで、日本での試合開催も検討していました。少し前に私のクラブから連絡があり、日本のサッカーファンが何を求めているか教えて欲しいということで、現地まで出向いてJリーグの各クラブのファンクラブの内容を伝えたりもしました。
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ただ、チームが最終節で劇的にEL出場を決めて、予備予選の日程が中国ツアーの日程と重なってしまったことから、ツアーは中止に。これもある意味ウー・レイ効果ですね(笑)」
今回は叶わなかったが、将来的にはエスパニョールの試合が日本で行われることもあるかもしれない。
もっとも、サッカー熱が上がる中国やインドなどのアジア諸国、「クラシコ」のパブリックビューイングも行われ、そこではまるでフェスのような盛り上がりを見せていると聞く。これまで以上に、マーケット重視の選手獲得を目論むチームが増えてきても不思議ではないだろう。
“育成=バルサ”のイメージだが。
とはいえ、エスパニョールはアジア市場のみに目を向けているわけではない。中林さんが強調したのは、チェン会長の強化戦略だ。
「日本では、“育成=バルセロナ”のイメージがありますが、語弊を恐れずに言うなら、他所から有望株をかき集めたエリート集団。エスパニョールは地域の子供たちを育て、輩出し、売ることで成り立ってきたクラブでもあります。'18-19シーズンは出場選手全員がカタルーニャ州出身選手、下部組織出身選手ということもありました。
過去にはヘラルド・モレノ(ビジャレアルへ移籍した下部組織出身のエースFW)など、『クラブにお金が落ちるなら』と泣く泣く移籍していくシーンを山ほど見てきましたが、それほどクラブ愛が強い選手が多い。
そんな中、チェン会長就任以降は、エスパニョールで育った選手の買い戻しが始まりました。有名選手を買い漁るのではなく、クラブのアイデンティティを重視する方針を採ったことで、周囲からの反発を抑えられたのではないでしょうか」
'18-19シーズンの主軸を見ると、ナポリでCLも経験したCBダビド・ロペス、フランスのリヨンから戻ったMFセルジ・ダルデル、ミランやAEKアテネにいたDFディダク・ビラら下部組織出身選手の“復帰組”に加え、経験豊富なGKディエゴ・ロペス、MFエステバン・グラネロらベテラン選手が融合。そこに不足していたポジションのウー・レイやボルハをピンポイント補強した。
クラブ愛と経験値、そして的確な選手補強がチームの絆を強めた、とは言いすぎだろうか。
さらに、先日にはクラブの負債の大部分が解消されたという報道もあり、来季以降は資金をチーム強化に充てられる見込みだ。
潤沢な資金、戦力の整備、結果から得る自信。いよいよクラブ史上初のCL出場権を目指す準備は整った――と言いたいところだが、これもクラブの性なのか、またしても主力選手の移籍話が後を絶たない。