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エスパニョールを知る日本人に聞く。
中国人ウー・レイ獲得で何が変化?
text by
谷川良介Ryosuke Tanikawa
photograph byGetty Images
posted2019/06/29 11:30
2019年1月にリーガの舞台へと渡ったウー・レイ。文字通りエスパニョールの救世主となった。
抜群のスピードがアクセントに。
ウー・レイはペリコたちの不安を吹き飛ばすように、いきなり爽快なプレーを見せつける。
デビュー戦の22節ビジャレアル戦では途中出場ながらチームの同点ゴールを呼び込むと、26節バジャドリー戦では移籍後初ゴール。34節セルタ戦では鮮やかなジャンビングボレー弾で目が肥えたペリコたちの度肝を抜いた。
“中国のマラドーナ”という触れ込みとはちょっと違うが、ウー・レイは抜群のスピードで、ボルハに頼りきりだった攻撃陣にアクセントを加えた。加入後のエスパニョールの成績は17戦で7勝2敗8分、敗戦はバルセロナと6位に入ったセビージャ戦のみ。
自身にとっても初の海外挑戦となった半年間で16試合出場のうち先発12試合に出場、3得点1アシスト。かつて半年間所属した西澤明訓(6試合0得点)、中村俊輔(13試合0得点1アシスト)をしのぐ堂々たる成績だった。
ちなみに日本人2人の名誉のために記すと、西澤も中村も、ペリコから人気を誇った選手であった。中林さんによれば、現地ファンの評価はこんな具合だ。
「アキは国王杯のバルセロナダービーで点を決めているだろ(後にオフサイドで取り消し)。カンプノウで点を取るやつなんか、そうそういないぞ? ナカムラは家族の事情で帰っただけだろ? CLでバリバリやっていたスターがやって来たときは興奮したぜ。直接FKでのゴールが見たかったな」
中国での視聴者数は4000万人!
話を戻そう。ウー・レイ効果はピッチ内のことだけではない。
クラブの公式サイトによれば、背番号「24」のユニホームは入団直後の10日間で400枚のクラブレコードの売り上げを記録。中国でのデビュー戦の視聴者数は4000万人という桁違いの数字を叩き出した。
また、かつての所有スタジアム“サリア”を財政難で手放した過去を持つエスパニョールが「10年前にようやく手に入れた」RCDEスタジアムは、観客数の伸び悩みが問題視されていた。しかしウー・レイ加入以降は多くの中国人サポーターのおかげで活気を取り戻しつつある。スペイン紙「AS」によれば、中国サッカーファンの89%がエスパニョールを支持すると答えたデータもあるようだ。
つまり、ウー・レイ獲得は中国のビッグマーケットにおいて、エスパニョールだけでなく、リーガ・エスパニョーラ自体の規模拡大に大きく貢献したと言える。
事実、リーガのハビエル・テバス会長は中国サッカー協会とのコラボレーションを発表した場や公式ツイッターでもその効果を発言している。
「ウー・レイは素晴らしい選手。中国全土が彼とエスパニョールを応援している」