ビッグマッチ・インサイドBACK NUMBER
トーレス引退会見に見えた人柄。
仲間を信じ、ファンに愛されたFW。
posted2019/06/28 17:30
text by
寺沢薫Kaoru Terasawa
photograph by
Getty Images
6月23日、都内某所でフェルナンド・トーレスの引退会見があった。
アトレティコ・マドリー、リバプール、チェルシー、ミランと欧州の一線級クラブに在籍し、公式戦通算で250ものゴールを積み重ねたトーレスは、2018年7月よりサガン鳥栖に加入してJリーグのファンに勇姿を見せてきたが、35歳となったこのタイミングで18年間のプロキャリアに幕を下ろすことを決めた。
会見の席で「これまで一緒にプレーした中で最高のチームメートは?」と聞かれたトーレスは、ある選手の名前を即答し、こう答えた。
「ずっと言ってきたが、一緒にプレーした中で最高の選手はスティーブン・ジェラード。彼は僕のゲームを完成させてくれたプレーヤーだ。ピッチで彼と一緒になってから、僕のレベルは異なる次元に達したと思う。スティーブンと一緒にプレーした3年半は信じられないものだった。たとえ1分でも、あの日々に戻りたいと思うよ」
「ジェラードは僕に幸せをくれた」
ジェラードとコンビを組んだリバプール時代は、トーレスにとってキャリアハイと言える時期だった。特にアトレティコから移籍してきて1、2年目のシーズンのパフォーマンスは「凄まじい」のひと言で、ピッチに立てばいつだってチームにゴールを約束したし、相手の一瞬の隙をも逃さない集中力が研ぎ澄まされていた印象だ。
対峙するDFは片時も彼の挙動から目が離せなかったはずだし、少しでも余裕を与えてしまえばジェラードからロングレンジのスルーパスが飛んできて、この上ないタイミングで抜け出したトーレスがゴールを襲う。2人のコンビネーションはまさに"阿吽の呼吸"で、彼らはリバプールの、プレミアリーグの看板コンビだった。
自身にとって「理想の選手」だったというジェラードとの相性の良さについては、引退会見だけでなく、過去の海外でのインタビューでも度々語ってきた。
「スティービーのような選手と組めば、ゴールは簡単に取れる。お互いのポジショニングが手に取るようにわかるし、お互いにゴールを奪える」
「ジェラードは、世界中の誰よりも僕に幸せをくれる選手だ」