大学野球PRESSBACK NUMBER
38年ぶりに大学野球制した明治大学。
エース森下暢仁を変えた、あの敗北。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2019/06/18 17:30
優勝を決めた直後の明治大学のナイン達は、森下暢仁のいるマウンドに集まって殊勲のエースを抱え上げた。
伊勢大夢が決勝までバトンを繋いだ。
コンビを組むキャッチャーの西野真也が、このシーンを振り返る。
「内にカットボール、カットボールと続けて、粘られていたので、やっぱりアイツ(森下)が一番自信ある力のある真っ直ぐで勝負かなと思ってサインを出しました。
ちょっと(球は)抜けてしまったんですけど、アイツが『腕を振った』と言ったとおり、力があるボールだからこそ空振りが獲れたと思っています。あの場面は冷静に、思い切った攻めができたんじゃないかと思いますね」
前回登板から決勝戦まで中3日、体調もほぼ万全だった。
同じ4年生でドラフト候補の伊勢大夢がトーナメント初戦(2回戦)の福井工業大戦で先発。打線も奮起して9対2で(7回コールド)勝ちを収めると、準決勝の東農大北海道戦でも、再び伊勢が3回から2番手で登板し、7イニングを1安打無失点に抑える好投を見せていた。
伊勢が、決勝のマウンドで待つ森下に、しっかりとバトンを繋いだのだ。
「このメンバーと野球をやってきて、本当に良かった」
「チームのみんなが決勝の舞台に(自分が)立てるように繋いでくれて、野手陣も本当にピッチャー陣を助けてくれるバッティングをしてくれて……。何が何でも今日は自分が抑えなければいけないと思いながらマウンドに上がりました」
決勝戦直後、森下はこんな言葉を口にしていた。
「今までこのメンバーと野球をやってきて、本当に良かったです」
彼の心の奥から自然に出てきた、21歳のエースの本音だ。
もちろん、森下のエースとしての活躍や、日頃の言動だけでチームがまとまっていったわけではない。日々の生活の中で、チームの手本となるような森下の姿を見てきたからこそ、「森下をみんなで盛り立てよう」と部員全体が1つになることができたのだ。
副主将でチームの主砲も務める北本一樹は、森下について次のように語る。
「3年生のときまでは、わりとチャランポランな性格だなって見えていたんです。でもキャプテンになって、本当に責任感が生まれたというか、みんなが自分を見ているということを、ちゃんと気にするようになったと思います。悪いことはもちろん全くしないし、先頭に立って、良い見本を見せてくれている。キャプテンになって本当に変わったなと思います」