大学野球PRESSBACK NUMBER
38年ぶりに大学野球制した明治大学。
エース森下暢仁を変えた、あの敗北。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2019/06/18 17:30
優勝を決めた直後の明治大学のナイン達は、森下暢仁のいるマウンドに集まって殊勲のエースを抱え上げた。
トイレ、風呂場を率先して掃除する主将。
捕手の西野が、さらに続ける。
「たとえば寮生活の中で、寮の掃除だったり、食事もですけど、そういう面でも(森下は)しっかりやっていくぞという姿勢をいつも見せてくれるので。
部屋の中をキレイに掃除するのは当たり前のことですけど、トイレであったり、お風呂であったり、洗濯場であったりの共同スペースをアイツが率先して掃除するんです。
『当たり前のことを、きっちりやっていけば野球の結果にも繋がるんだ』という姿勢を、アイツ(森下)が中心になってチーム全体に伝えている。それを徹底してできていることが(勝利の要因に)あると思います」
こうした森下の変化に、善波監督も目を細める。
「例えば私が(選手たちに)小言を言ったとき。部員たちに向かって『こんなことを(監督に)言わせちゃダメだろ』と、ハッキリ物を言うようにもなりましてね。それを私も横で聞いていたんですが、『こんな面もあるんだ、頼もしい奴だな』と。そんなことが(シーズン中)ちょこちょことありましたから」
試合で出番がないときもベンチ内では人一倍、声を出してチームを盛り上げる森下の姿が常にあった。
「アイツのひと言で雰囲気がガラッと変わる」
「練習のときも試合のときもそうですけど、チームの雰囲気がおかしいとき、アイツのひと言で、チームの雰囲気がガラッと変わることがあるんです。それが不思議というか、それだけ説得力がある、と。そういう力を持っている人間なんだなと、見てて思いますね」(西野)
昨年まではゲーム後半で粘り切れないピッチングが見られるなど頼りなさもあったという。それが最終学年になり、主将を任されたことにより、チームを牽引するという自覚が徐々に育っていき、自然とエースとしてのマウンドでのパフォーマンスも変わっていったという。