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鹿島内定の大学3年がコパの舞台へ。
上田綺世「通用しなくても、点を」
posted2019/06/14 17:00
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph by
Naoki Morita/AFLO SPORT
想像してみよう。大学生で唯一、日本代表に選ばれる。舞台は、あのコパ・アメリカ。そこで、PKのキッカーを務める。
重圧は半端じゃない。多くの人の場合、“外したらどうしよう”“誰か代わりに蹴ってくれないかな”が、きっと頭をよぎる。
今回のコパ・アメリカで唯一、大学生ながらメンバー入りした上田綺世は、違う。ペナルティースポットに立つ彼は、こう考える。
「PKって、シンプルに試合中のどんな場面よりも一番チャンスじゃないですか。ゴールから11mの距離から、誰にも邪魔されずに、自分のタイミングでシュートを打てる。ワクワクしかないですし、その状況を楽しめない理由がわからない。もちろん重圧はありますけど、FWとしてそこから逃げるのは、絶対に違うと思います」
大学2年で鹿島内定、スカウトも好評価。
法政大学サッカー部に所属する上田は、まだ2年生だった今年2月の時点で、2021年度に鹿島アントラーズに加入することが内定した。入団内定会見の場で、鹿島の椎本邦一スカウト担当部長は、その能力の高さをこう語っている。
「鹿島学園高時代も点を取る良いFWだなと思っていたけど、大学に入って体もできてかなり良くなった。総理大臣杯とかでも取っていたので、とにかく点を取るやつだなと。FWとして一番大事なことで、その感覚は教えられる部分ではないですし、センスの部分。『そこにいるんだ』というのを持っている」
6歳のころ、父親が社会人チームの試合でハットトリックを達成する姿を見て以来、点取り屋一筋だ。厳しい父とのマンツーマン練習では、野球場のピッチャーマウンドに立つ父から、バッターボックスに立つ綺世少年へ全力でボールが投げつけられ、恐怖心に耐えた。ロングパスの練習では、父があえてあらぬ方向に蹴るボールを全力疾走で追いかけた。
では、「教えられる部分ではない」ゴールハンターとしての感覚やセンスは、どのようにして身に付けたのか。