バレーボールPRESSBACK NUMBER

ブラジル隆盛を築いた名将の助言。
「日本バレーは歩みを止めた」 

text by

米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

PROFILE

photograph byNoriko Yonemushi

posted2019/05/29 11:00

ブラジル隆盛を築いた名将の助言。「日本バレーは歩みを止めた」<Number Web> photograph by Noriko Yonemushi

1982年からブラジルの各年代の指導を行ってきたマルキーニョス氏。堺ブレイザーズを2シーズン、サポートした。

子供の指導まで“ブラジルバレー”で統一。

 ブラジルがやってきたことの1つは、選手の指導方針の統一である。ブラジルでは、代表チームとクラブチームがほぼ同じコンセプトで選手を強化している。例えば、代表チームが国際大会で勝つために、クラブチームで取り組んでほしいことを、協会が各チームに伝えるのだという。

「私自身もそういう役割を担っていました。例えば、『今の国際大会ではサーブの威力が非常に強いので、サーブレシーブをセッターに正確に返すのは難しい。だからハイボールをしっかりと打ち分けられる選手を準備してください』というように、状況に合わせて要望を伝えます。そうすれば、次に代表が集まった時、選手にはそういう力が備わっているのです。

 チームによって考え方などがバラバラだったら、代表に行った時に選手は違うことをやらなければいけなくなりますから」

 それはトップのカテゴリーに限らない。

 ブラジル協会は、大規模なクラブチームから子供を教えている小さなクラブチームまで、全国から指導者を集めて講習を行い、選手の年代別の指導の仕方を伝える。地方の小さなクラブチームから代表までが、「同じ考え方、同じ教え方、同じ目的」のもと、1本のラインでつながっているのだ。

リーグ全体の底上げにも着手。

 その仕組みは、各チームが「自分たちのチームだけ強ければいい」という考えでいては成り立たない。

 ブラジルの国内リーグ(スーパーリーグ)では、有力選手を多く抱えているチームが、試合にあまり出られない選手を他チームにレンタルして試合経験を積ませる、というケースがよくあるという。そうしてレンタル先のチームで試合に出て成長し、代表入りを果たす若手選手もいる。そのようにして新しい芽が育ちやすい環境も整えている。

 また近年、スーパーリーグはランキング制を採用している。例えば、代表の主力クラスの選手は7ポイント、外国人選手は5ポイント、下のカテゴリーから上がってきた選手は0ポイント、というように選手のランクごとにポイントが決まっており、各チームは合計40ポイントまでしか選手を所有できない。

 そうすることで、資金力のあるチームだけが強くなるという状態を防ぎ、戦力の均衡を図っている。また、0ポイントで獲得した選手は、同じチームにいる限りランクが上がってもポイントは変わらないため、自チームでの選手育成に力を入れる流れにもなる。

【次ページ】 日本バレーに対する言葉。

BACK 1 2 3 4 5 NEXT
堺ブレイザーズ
マルキーニョス
東京五輪
オリンピック・パラリンピック

バレーボールの前後の記事

ページトップ