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栗原恵、バレー人生に笑顔のピリオド。
ケガ、五輪落選も、すべて幸せ。
posted2019/06/11 17:30
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Kiyoshi Sakamoto/AFLO
少し緊張気味の笑顔を、無数のフラッシュが照らす。
「バレー人生の最後は『バレーボールをやってきてよかった』と笑顔でコートを去ることを目標にしていたので、思い描いていた通り。何より幸せな選手生活でした」
走り続けた17年。振り返れば、決していい時ばかりでなかった。
だが、檀上で見せる笑顔は正直だ。
“メグカナ”フィーバーが巻き起こった頃よりもずっと、栗原恵は美しく輝いていた。
パワフルカナが語ったメグの強さ。
“パワフルカナ”と、“プリンセスメグ”。その愛称に違わず、世間でもどちらかといえば、大山加奈のほうが強くて明るく、栗原のほうが可憐でおとなしそう。そんなイメージが先行していたはずだ。
だが、実際は真逆。そう言うのは他ならぬ大山だ。
「メグのほうが強いんです。芯が一本、いつもしっかりありました」
共に、高校在学時に日本代表へ招集された。187センチの栗原と大山。シドニー五輪出場を逃がし、復活を目指す日本女子バレーボール界にとって待望の大型エースの誕生に、寄せられた期待は大きかった。だが、もともとネガティブで引っ込み思案な大山は、代表合宿初日も1人で行くのが怖くてたまらず、見かねた下北沢成徳高の小川良樹監督が付き添ったほど。送り届けた小川監督が帰ると、一気に不安と寂しさが込み上げた。
「あぁ、私1人なんだ、と思ったら怖くて。部屋で泣いていたらメグに『何泣いてんの?』って(笑)。中学を卒業して親元を離れたメグは私よりずっと覚悟があったし、度胸も備わっていた。メグは強いなぁ、って泣きながらずっと思っていました」
そんな強い栗原でも、日本代表のエースとして日の丸を背負うプレッシャーは想像以上だった。