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「日本の筋トレ」と歩んだ34年・後編。
身体を動かす愉しさを知った日本人。
text by
増田晶文Masafumi Masuda
photograph byAFLO
posted2019/03/17 11:05
カリフォルニア州のベニスビーチは、マッスルビーチとも呼ばれる筋トレの聖地。写真は1990年代の様子。
身体を動かす愉しさを知った日本人。
長らく日本人にとってスポーツは「嗜み」だった。しかも「勝負」が優先で「娯楽」とはほど遠い。学生ならともかく、社会に出て運動を継続するなど現実味が低かった。
昭和40年代、デブと同義の「恰幅がいい」は社会的成功者をシンボライズさえしていたことは特筆に値する。社長サンにとって、親しむべきスポーツはゴルフくらい……。当節の若手CEOたちのフィットネス自慢とは雲泥の差だ。
男は企業戦士として闘わねばならず、女は良妻賢母であることを求められた。スポーツより仕事、家事――運動不足に陥るのは当然だろう。
そんな日本人が、高度経済成長期からバブル期を迎え、身体を動かす愉しさと意義を知るようになった。ほどなく景気は悪化したものの高齢社会がきて、若さ志向と健康志向が日本を覆った。
若々しくありたい気持ちを私は否定しない。そこへ、より身近に気軽にスポーツする環境が整ってきた。
この分野は、今後とも有望な市場であり続けるだろう。新手のフィットネスビジネスも次々に登場するはずだ。
「身体にいいこと、いろいろやってる!」
まさに私たちは、日本のフィットネス史におけるパラダイムシフトを経験している。