松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER

パラ・パワーリフター大堂秀樹。
「コーラと赤いきつね」の謎とは? 

text by

松岡修造

松岡修造Shuzo Matsuoka

PROFILE

photograph byYuki Suenaga

posted2019/02/26 07:00

パラ・パワーリフター大堂秀樹。「コーラと赤いきつね」の謎とは?<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

パラ・パワーリフティングの日本代表選手・大堂秀樹のトレーニングルームにて。

大事なのは「いつもと同じ」こと。

松岡「今は、『Eat-to-Win』といって、『食事で勝つ!』とも言われている時代です。食事にこだわらないといけないアスリートが……おいしいですけど、試合前にいいのかな……」

大堂「いつもと同じであることが僕にとっては重要なんです。試合前に何を食べるか、試合中に何を口にするか、すべて事前に決めておきたい。だから試合中も練習中も、飲むものはコーラと決めている。世界中どんなところでも、コーラが手に入らない確率は極めて低いので」

松岡「それがもし他のドリンクだと、大変なことになる」

大堂「まあ、気分的には乗らないです」

松岡「面白い……。そんな習慣は初めて聞きました。赤いきつねは何個食べるんですか」

大堂「1つです。カロリーも体感的にわかっています。1つ食べればどれだけ体重が増減するかもわかっている。だから検量をパスするための計算もしやすい」

松岡「なるほど。体重のこともあるのか……。海外でもこれだと絶対に食あたりしないし。そう考えると合理的ですね」

大堂「あともう1つ言えば、僕はどうやら、食へのこだわりが薄いんです。栄養価がどうのこうのではなくて、好きか嫌いか。だから嫌いなものは絶対に口にしないですし、食べる量も少ない。プロテインなんかも気が向いたときや体重が減っているときに口にするくらいです」

松岡「ちなみに嫌いなものって」

大堂「納豆とか臭いのきついもの。苦いものや青魚もダメです」

松岡「要するに、バーベルが上げられればそこまで食事にこだわる必要はないと。食事以外にもルーティンはありますか。試合前に必ず行うこと。たとえば奥様に電話をするとか」

大堂「結婚して20年くらい経つので、さすがにしないです。僕にとってのルーティンは試合に集中するためのもの。雑念をすべて排除していって、最後に考えるのが『バーベルを上げることだけ』という精神状態を作りたい。その時にあれを忘れたとか、今日は他のメーカーのコーラだったとか、気になることがあるとダメなんです」

松岡「僕は……そういうの、あんまり気になりません」

大堂「良いですね(笑)」

松岡「なぜそこまで気になるんですか」

大堂「この競技は精神力がすごく試されるんですよ。バーベルを上げるのはたった3秒くらいだけど、その一瞬にちょっとでも雑念が入ると上がらない。特別なプレッシャーがかかる状況下で、いかに普段通りできるか。ポイントはそこなので」

松岡「さきほどから練習を見ていると、しょっちゅうリストラップをまき直していましたよね。あれも1つのルーティンですか」

大堂「そうです。試技の前に息を思い切り吸うのも、肺に圧をかけるため。そうすると次に息を吸うときに5%くらい余計に吸えるイメージがあります」

松岡「息をたくさん吸った方が力が出る」

大堂「僕の場合はね」

【次ページ】 「それが最後に立った記憶です」

BACK 1 2 3 4 NEXT
大堂秀樹
松岡修造
東京パラリンピック
オリンピック・パラリンピック

他競技の前後の記事

ページトップ