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メジャーで増える救援投手の先発、
オープナーは育成失敗のごまかし?
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2019/01/14 11:00
タンパベイ・レイズのケビン・キャッシュ監督は来季もオープナー制度を採用する意向を明かしている。
知恵袋キャッシュの逸話。
広く知られた話であるが、最初に取り入れ、結果へと繋げたのはタンパベイ・レイズを率いるケビン・キャッシュ監督だ。41歳の青年監督は同地区のレッドソックス、ヤンキースと大きな戦力差がありながら、昨季は90勝72敗、勝率.556の成績で下馬評を覆し、大きな評価を得た。
現役時代は捕手でメジャー実働8年。246試合の出場で通算打率は.183。レッドソックスに在籍した'07、'08年はナックルボーラー、ティム・ウェイクフィールドの専属捕手を務めたが、当時の監督であった現インディアンスのテリー・フランコナ監督から「お前にバットなんていらない。ベンチで俺の横にいつも座っていればいいんだ」と言われ続けてきた逸話を持つ。
意味するものは“知恵袋”。名将の名をほしいままにするフランコナ監督のこの言葉はキャッシュ監督の持つ能力を代弁するこれ以上ないエピソードと言える。
先発の5人を揃えなければ。
レッドソックス、ヤンキース、ドジャース、カブスなどのお金持ち球団とは違い、限りある資金の中、満ち足りない戦力で戦うことは容易ではない。その中で生まれたこの発想と手腕は大きく評価されるべきだと感じるが、その一方で筆者には違和感も拭いきれない。
「オープナー」とは戦力差を補う弱者の発想であろう。現場を預かる監督の立場としては理解できるが、ベースボール・オペレーションと呼ばれる野球編成部門、特に育成の観点から考えれば邪道とも感じる。
本来は5人の先発投手を自前で育てるのが理想である。その足りない部分をFAやトレードで補うはずだが、先発投手の力不足を「オープナー」でごまかしていたのでは真の先発投手は育たないのではないだろうか。5日に1回の登板で7回を100球で投げ切ってこそ、先発投手は評価される。そんな理想の5人を揃えるために編成、育成部門はある。