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本塁打量産とキンブレル争奪戦。
リリースポイント地表151cmの脅威。

posted2019/01/19 10:00

 
本塁打量産とキンブレル争奪戦。リリースポイント地表151cmの脅威。<Number Web> photograph by AFLO

2018年のMLBワールドシリーズ第1戦に登板したクレイグ・キンブレル。

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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 大リーグのFAマーケットも3カ月目に入ったが、大物選手の動向はまだまだ確定していない。

 打者で注目されるブライス・ハーパーとマニー・マチャドは、それぞれフィリーズ入りとホワイトソックス入りがささやかれているが、百鬼夜行のこの世界だけに、どんな逆転劇が待っていないとも限らない。

 一方、投手の目玉は、なんといってもワールドシリーズを制したばかりのクレイグ・キンブレルだろう。

 一説によると、キンブレルと代理人のデイヴィッド・ミーターは、6年総額1億ドルの大型契約を狙っているらしい。

 なるほど、過去9年間に積み重ねたキンブレルの実績は素晴らしい。9年間で542試合に登板し、ゲームを締めくくったのが449回(333セーヴ)。その間の防御率1.91は、いまのところ、あの鉄人マリアーノ・リベラ(652セーヴ)の通算防御率2.21より上を行っている。

 ただ、昨年後半戦からポストシーズンにかけてのキンブレルは、やや苦しむ姿も見られた。オールスター後の22試合で12セーヴをあげたものの、防御率は4.57。オールスター前は41試合で30セーヴをあげ、防御率も1.77だったから、急降下ともいえる。

 不調はポストシーズンでも尾を引き、9試合に投げて6セーヴを記録したものの、防御率が5.91。マウンド上で首をかしげる姿も何度か見受けられた。

低いリリース地点の効果。

 ただ、この不調は一時的なものではないだろうか。最大の理由は、「打球に角度をつけて遠くへ飛ばす」打法(ランチ・アングル・スウィング)が全盛の現在、リリースポイント(球離れの位置)が低いキンブレルの投法が、きわめて高い効果をあげていることだ。

 ビデオを見ればわかるが、球をリリースするときのキンブレルの右手の位置は、頭よりもかなり低い。MLB.comのデータを参照すると、彼のリリースポイントは地表4.95フィート(約151センチ)と測定されている。

 現役の一線級を見ても、キンブレルよりリリースポイントの低い投手は他に見当たらない。マックス・シャーザーが5.11フィート、ジョシュ・ヘイダーが5.15フィート、クリス・セールが5.27フィートといった具合で、彼らに共通するのは、速球(フォーシーム)の被打率がきわめて低いことだ。ヘイダー=1割3分、キンブレル=1割7分1厘、セール=1割7分9厘、シャーザー=1割9分8厘という数字は、かなり説得力が高い。

【次ページ】 本塁打量産打法に極めて有効。

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クレイグ・キンブレル

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