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岸孝之と上沢直之がMLBを翻弄。
カーブの有効性と五輪での使用球。
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![鷲田康](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/-/img_63c0172edf1a3eec5d5017836b5eb9301895.jpg)
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2018/11/12 16:30
![岸孝之と上沢直之がMLBを翻弄。カーブの有効性と五輪での使用球。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/2/6/700/img_26f5d19efe6f819ef4d97967e0990205111998.jpg)
メジャー相手に好投した岸孝之。カーブの緩急と高低差はパワーヒッター相手に有効だ。
カーショーらも決め球に。
日本からメジャーに復帰していきなりリーグ最多タイの18勝をマークしたセントルイス・カージナルスのマイルズ・マイコラス投手もこのカーブを武器に快進撃を果たした。
またロサンゼルス・ドジャースの絶対エース、クレイトン・カーショー投手をはじめ多くの一線級投手がいわゆるパワーカーブでフライボールを狙う打者を手玉に取ってきているわけだ。
ただ、この球種が厄介なのは、使いこなせれば威力は十分だが、曲がり幅が大きいだけにきちんと制球して自在に使いこなせるようになるには、かなり繊細な指先の感覚や腕の振りが求められる。
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カーブ投手がそう簡単には生まれない理由も、そこにある。
そうして扱いが繊細な球種だから、実は侍ジャパンの国際試合では、なかなかカーブ投手は陽の目を見ないできた。
その典型例が岸だったのである。
メジャー球に苦しんだ岸。
2009年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、1次候補に選ばれながら、大会で使われるメジャー球が合わずに宮崎合宿終了後に最終メンバーから外されるという苦い経験があった。
「日本のボールより一回り大きい感じで滑るし、とにかく手に馴染まなくてまったくダメでした」
本人がこう振り返ったように、カーブ投手にとってしっとりした感触がなく、指にかかりにくいメジャー球は一層、この球種を難しくする。どうしてもスプリットのような“はさみ系”やいわゆる縦スラと呼ばれる縦のスライダーのような滑り系のボールを武器にする投手の方が、即効的に戦力になる傾向があったのである。
ただ、2020年の東京五輪での金メダルという視点で考えると、状況はガラッと変わってくる。