プロ野球亭日乗BACK NUMBER
岸孝之と上沢直之がMLBを翻弄。
カーブの有効性と五輪での使用球。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2018/11/12 16:30
メジャー相手に好投した岸孝之。カーブの緩急と高低差はパワーヒッター相手に有効だ。
日米野球で使われる2種類の球。
実は今回の日米野球で使用するボールは2種類ある。
米国側が守っているときは、ローリングス社製のメジャー使用球だが、日本が守備のときは世界野球ソフトボール連盟(WBSC)の公認球となる日本のSSK社製のボールを使っている。
「日本のプロ野球で使っているミズノ社製の公式球と比べると、縫い目の山が多少高かったりする違いはあります。ただ、メジャーの公式球に比べれば滑りという点ではほとんどありませんし、その点でアジャストしなければならないというのはないと思う」
こう語るのは建山義紀投手コーチだ。
NPBの公式球と完全に同じというわけではないが、メジャー球に比べれば格段に投手への影響は少なくなる。
そしてこのWBSCの公認球こそ、2年後の東京五輪の野球で使われるボールなのだ。
ということは五輪では日本の投手がWBCのたびに苦労するボールへのアジャストという問題は、少なくともなくなる。岸のようにボールへの順応ができずに代表から除外されてきた投手にとっては、最大の障壁がなくなるということなのである。
モリーナからカーブで三振。
だとすれば日本のカーブ投手たちが国際舞台に立つためには、あとはカーブの威力、カーブをきちっと扱える技術を戦いの場で証明するだけなのだ。
「初戦の先発ということで緊張の方が強く、楽しむ余裕はありませんでした。こういう形での途中降板になってしまい悔しいです」
試合後の岸はこう語って少し残念そうな表情を見せた。
4回3分の1を投げて4安打3失点。3回にはアメド・ロサリオ内野手(ニューヨーク・メッツ)にチェンジアップを本塁打され、5回1死一、二塁で球数制限の80球を超えて降板した。
それでも初回にはあのヤディエル・モリーナ捕手(カージナルス)からカーブで空振り三振を奪うなど、緩急をつけたピッチングで5つの三振を奪う力投。3回途中に右手親指の付け根付近からの出血でユニフォームのズボンに血の跡がついたが、表情も変えずに規定投球数を投げ切った。