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つなぐも崩せずイングランドに敗北。
スペインはW杯惨敗から停滞したまま。
 

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吉田治良

吉田治良Jiro Yoshida

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photograph byUniphoto press

posted2018/10/21 10:00

つなぐも崩せずイングランドに敗北。スペインはW杯惨敗から停滞したまま。<Number Web> photograph by Uniphoto press

ポゼッションで圧倒しながら……というのはスペインの負けパターンだが、そこに変革の息吹はあるのか。

“まどろっこしい”パス回し。

 そこで彼らが見せたのは、ボールを持てども崩し切れない、例によって“まどろっこしい”サッカーだった。イングランドの秩序立ったコンパクトな守備ブロックをこじ開けられなかったのは、攻撃に縦の奥行きが乏しかったからだ。

 近年のスペイン代表は純粋なウインガーを置かず、サイドの攻略はもっぱらSBが担ってきた。しかしながらこの日、SBで起用された左のマルコス・アロンソと右のホニー・カストロは止まって受けて捌くばかりで、前線の選手を追い越し、縦への推進力をもたらすようなプレーはほとんど見られなかった。

 その意味で、ダニエル・カルバハルを故障で欠いたのは痛かったが、それ以上にバルセロナ時代の確執を引きずって、ジョルディ・アルバを頑なに招集しないL・エンリケの狭量が理解しがたい。はっきり言って、M・アロンソに存在価値は見出せなかったし、ホニー程度のSBなら世界にはざらにいる。

横に広げないから交通渋滞。

 敵陣を横に広げるサイドチェンジのパスも少ないから、ペナルティーエリアの幅に人が密集し、頻繁に交通渋滞が起きた。ようやく淀みが解消されるのは、57分に展開力に長け、縦に攻撃のスイッチを入れられるダニ・セバジョスが、この日低調だったイアゴ・アスパスに代わって投入されてからだった。

 イスコの欠場(急性虫垂炎の手術で未招集)を敗因と見る向きもあるが、創造性豊かなプレーで大きな違いを作り出す一方で、球離れの悪さを指摘される彼がいれば、さらに交通渋滞は激しくなっていたかもしれない。

 むしろ際立ったのは、最前線でボールを収められるジエゴ・コスタの不在だ。

 純粋なCFがいなくてもスペインが天下を獲りえたのは、シャビ、アンドレス・イニエスタ、ダビド・シルバといったボールプレーヤーが同時期にひしめき、その圧倒的なスキルで相手をねじ伏せられたからだ。しかし、彼らが代表を去った今、いわゆる“ティキタカ”を貫き通すことが──とりわけフィニッシュの部分で──難しくなっている。

【次ページ】 フィジカルでの劣勢が目立つ。

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