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つなぐも崩せずイングランドに敗北。
スペインはW杯惨敗から停滞したまま。
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byUniphoto press
posted2018/10/21 10:00
ポゼッションで圧倒しながら……というのはスペインの負けパターンだが、そこに変革の息吹はあるのか。
フィジカルでの劣勢が目立つ。
さらに、例えばイングランドのマーカス・ラッシュフォードのように、高度な技術と強靭な肉体を兼備したタレントが続々と輩出されるような時代にあっては、なおさらスペイン人選手のフィジカル面のハンデが目に付くようになってもいる。
イアゴ・アスパスもロドリゴも、機動力とチャンスメイク能力に優れたアタッカーには違いない。それはこの日、途中出場からわずか2分後に反撃の狼煙となるゴールを挙げた、目下絶好調のパコ・アルカセルも同様だろう。
しかしながら、イングランドの屈強なディフェンダーにフィジカルで太刀打ちできるストライカーは、現時点でD・コスタしかいないのも事実なのだ。
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ただ、家庭の事情などでL・エンリケ体制ではまだ一度もプレーしていない彼も、すでに30歳。本来ならすでにCFの定位置を確保していなくてはならないアルバロ・モラタの停滞も深刻なだけに、“巧くて強いストライカー”の発掘・育成は急務であろう。
この日、イングランドの3得点すべてに絡んだハリー・ケインが、スペインのサポーターにはことさら眩しく映ったに違いない。
カウンターケアも克服できず。
一方の守備に関しても、W杯からの課題が克服されていなかった。
すなわち、ボールロスト後のネガティブ・トランジション(攻→守の切り替え)でバランスを崩し、カウンターを食らいやすい点だ。16分と30分に喫したゴールは、いずれも相手GKのフィードが起点。ポゼッションをしながら攻めきれずにボールを失い、プレスに行って取りきれず、逆に少ない手数でフィニッシュにまで持ち込まれている。
30分の失点シーンでは、GKのロングフィードを受けたケインに、百戦錬磨のセルヒオ・ブスケッツとセルヒオ・ラモスで挟み込みに行きながら、そもそものポジショニングの曖昧さを突かれて易々とかわされ、逆サイドのラッシュフォードにラストパスを通されている。
攻撃と守備は表裏一体。ポゼッションをフィニッシュに結び付けられない非効率性が、カウンターを招く大きな要因だ。格下が相手なら綻びも目立たないが、強豪国は確実にその穴を突いてくる。
2003年6月以来のホームでの敗戦で、UEFAネーションズリーグでの決勝トーナメント進出を確定できなかったスペイン。自力での突破のためには11月15日のクロアチア戦は勝利が絶対条件となるが、今度は敵地でもあるだけに、間違いなく前回対戦のようにはならないはずだ。