フランス・フットボール通信BACK NUMBER
女子サッカープロリーグは発展中。
米国、欧米の二極化も実は低年俸。
posted2018/10/23 07:00
text by
フランク・シモンFrank Simon
photograph by
Franck Faugere
『フランス・フットボール』誌10月2日発売号では、フランク・シモン記者がヨーロッパとアメリカの女子サッカーリーグを比較している。
同誌が今年から女子のバロンドールも表彰するようになったのは、来年フランスでFIFA女子ワールドカップが開催されること以上に、ヨーロッパでも女子のプロリーグが発展し、長年にわたり世界の中心であったアメリカと二極化の様相を見せるようになったことが大きい。ちなみに日本をはじめとする東アジアは、女子サッカーのもうひとつの中心であるが、プロ化という点では欧米に大きく遅れを取っているのが現状である。
それではヨーロッパとアメリカとでは、どこに違いがありどちらが優れているといえるのか。シモン記者が分析した。
監修:田村修一
欧州で地位が低かった女子サッカー。
「アメリカンドリーム」
かつてヨーロッパの女性が、プロサッカー選手としての夢を実現するためには、大西洋を越えて新大陸に渡る以外に方法はなかった。
というのもヨーロッパでも女子サッカーは、イタリアやフランス、スカンジナビア諸国などで早い時期から存在したが、アメリカはヨーロッパとは異なり1980年代から学校スポーツとして女子サッカーが高校や大学で広まり、人気も得てこの20年というもの一種のエルドラド(黄金郷)を築きあげたからであった。
男子プロスポーツ大国であるアメリカにおいて、プレーレベルの高さと財政サポートを基盤に、最初のリーグであるセミプロのUSL Wリーグ(当初の名称はアメリカ女子インターリージョナルリーグ)が設立されたのは1995年のことであった。
女子アメリカ代表の国際舞台における実績は、今さら語る必要もないぐらいである。
過去7回のワールドカップで優勝3回(1991年と'99年、2015年)。これはヨーロッパの3回(1995年のノルウェーと2003年、'07年のドイツ)に匹敵する。
オリンピックでは優位はさらに顕著で、これまで4つの金メダル('96年と'04年、'08年、'12年)を獲得し、2つ('00年のノルウェーと'16年のドイツ)のヨーロッパに大きく差をつけている。
多くの選手がチャンスを求めて世界中からNWSL(ナショナル・ウーマンズサッカーリーグ=現行のプロリーグ)に身を投じるのは、極めて当然のことであるといえた。
ところがその図式が、ここ最近変わりつつある。
ヨーロッパはどのようにプロリーグを発展させたのか。アメリカとの違いはどこにあるのか。
4つの観点から分析する。