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「サッカーは非人間的、機械的に」
トルシエが語ったロシアW杯前と後。
posted2018/08/13 11:00
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Takuya Sugiyama
フランスの2度目の優勝で幕を閉じたロシア・ワールドカップを、フィリップ・トルシエはどう総括したのか――。
ジャンニ・インファンティーノFIFA会長が「史上最高」と自画自賛し、実際、プレーのクオリティ(も決して悪かったわけではないが)を除けば確かに間違いなく最高であった大会を、トルシエはどう見ているのだろうか。
大会直前から始まったイビチャ・オシム、フィリップ・トルシエというふたりの短期集中連載を終えるにあたり、多少時間は空いたがトルシエの電話インタビューをここにお届けする。
監修:田村修一
「違い」を超えて世界が1つに。
――ロシア・ワールドカップにどんな印象を抱きましたか?
「ワールドカップはサッカーの祭典であり、多くの国の集いでもある。世界のあちこちで問題や紛争が起こっている今日の状況を考慮すれば、とてもクリーンな大会であったといえる。
人々が喜びを感じていたのが良く分かった。彼らがにこやかに抱擁しあっているシーン、感動を分かち合っているシーンをずっと目にすることができた。行き届いたセキュリティーのもと心から喜びを満喫していた。
そうなったのは参加した人々のすべてが、最後まで自分たちの国旗とユニフォームに誇りを持ち続けたからだ。それぞれの特色とアイデンティティを誇示し、そのイメージが世界中に分け隔てなく伝えられた。そこには『違い』という名の統一感があった。
感じたのは人間としての一体感であり、世界がひとつになったという実感だ。すべてが異なっていても、人は互いに抱擁できる。それがこのワールドカップで私が受けた人間的な側面からの印象だ」
――組織・運営も素晴らしかったです。
「とても良く組織され、多くの国々がサッカーを競い合うために集まった。最大の目標は優勝することであり、ひとつでも上に進むことだ。そのためには効率的でなければならないし、何よりも勝たねばならない。
そこで見られたのは、拮抗した試合の数々だった」