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「サッカーは非人間的、機械的に」
トルシエが語ったロシアW杯前と後。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2018/08/13 11:00
ロシアW杯でのVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の画面。この制度の導入により、二度と“神の手”は出現しなくなるだろう。
「恐らく唯一のサプライズは日本」
「延長戦やPK戦、4年ごとに起こるサプライズ……。ドイツやスペイン、アルゼンチンといった優勝候補が敗れるサプライズ。ただ、それは、ワールドカップという大会の定番でもある。今回に限ったことではなく、昔からずっと起こり続けてきたことだ。
しかし今回に関しては、小国の起こすサプライズがなかった」
――2年前のEUROで、アイスランドやウェールズが起こしたサプライズですね。
「恐らく唯一のサプライズが日本だった。
というのも日本は、抽選のポット4の中からグループリーグを突破した唯ひとつのチームであるからだ。ポーランドとコロンビア、セネガルと同じグループに入った日本は突破の有力候補ではなかったが、ベスト8に進んでいてもおかしくはなかった。
それを除けばすべてが理屈通りに進んだワールドカップであったといえる。有力国が勝ち進み、スペインやドイツ、アルゼンチン、とりわけブラジルなど大国の敗退はあったが、他は強い国々が勝ちあがった」
ベルギーもクロアチアもこの優勝を認めない!?
「試合もまた素晴らしかった。幾つかのチームは不運だったとは言えないし、幾つかのチームが幸運だったとも言えない。そうではなくて、ピッチ上のロジックが常に順守された。敗れ去ったチームは運が悪かったからではない。
恐らくベルギーは、フランスは勝利に値しなかったというかも知れない。クロアチアも同じことをいうかも知れない。
彼らの言い分もわかるが、客観的に見て勝利に値しなかったチームはひとつもなかった。それがPK戦の結果であれ、スキャンダラスな勝利はひとつとしてなく、どれもロジカルな勝利だった」