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体操W杯で内村航平が予選落ち?
極端な不振の理由と“逆襲”の始まり。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byKyodo News
posted2018/03/28 11:30
W杯カタール・ドーハ大会で跳馬に臨む内村航平。恐怖心をいかにして克服するか。
大会初日は明るい表情だったのだが……。
一方で、初日の2種目めだったつり輪では、会心の演技を見せた。
実施の出来映えを示すEスコア8.666点は上々の点数。内村自身も「あん馬でミスしたことで集中力が上がった。つり輪は、リオデジャネイロ五輪以降では一番の出来だった。この種目は僕の武器ではないけれど、評価されることが分かった」と、かなりの手応えをつかんでいた。
2種目とも決勝には進めなかったが、初日の時点では表情は明るかったのだ。
内村に起こった想定外の出来事とは?
顔色が変わったのはその翌日だった。
予選2日目の最初の種目は跳馬。昨年の世界選手権で左足首を負傷した種目だ。
カタールへ出発した3月17日の夜、内村は「恐怖心がまだあるので、それを克服する何かをつかみたい」と話していた。
ところが、現地入りした18日からの練習は、思ったようにはいかなかった。
今大会の器具はドイツ製の「スピース」というメーカー。スピースの跳馬は台と支柱のつなぎの部分が柔らかいという特徴があり、日本で普段使っている製品に比べて台に手を付いたときの揺れが大きい。
そのため、現地入りしてからの練習では、今大会で使う予定だった「ヨー2」という技を一度も跳ぶことができていなかった。
無理をすると危険だと察知した佐藤コーチは、内村の高校時代からリオ五輪までの間に指導していた森泉貴博コーチに相談した。
森泉コーチの考えは自身の考えと一致した。
佐藤コーチは「ヨー2」を回避することを決定。ひねりが1回少ない「ロウ・ユン」を跳ぶ作戦に切り替えた。