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体操W杯で内村航平が予選落ち?
極端な不振の理由と“逆襲”の始まり。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byKyodo News
posted2018/03/28 11:30
W杯カタール・ドーハ大会で跳馬に臨む内村航平。恐怖心をいかにして克服するか。
ケガの再発を防ぐことには成功した。
点数のことはさておいて、結果的にはこの判断が功を奏した。
内村は踏み切りの際に高さが足りなくて姿勢が低くなっており、「着地した時に左足が痛かった」と顔をしかめたのだ。
内村は試合後、「ヨー2をやらなくて良かった。やっていたらまたケガをしていたと思う」と胸をなで下ろしていた。
恐怖心をぬぐい去ることはできなかったが、ケガの再発を防いだという意味で、跳馬の技の選択は成功していた。
「跳馬に引っ張られている感じがあった」
むしろ4種目の中で意外な課題が見つかるきっかけになったのが鉄棒だ。
今までの内村であれば、得意の鉄棒とあらば短期間でもすぐに器具のクセをつかみ、力の加減やタイミングを微調整できていたが、今回は順応しきれていなかった。
最初の手放し技である「屈伸コバチ」でバーにやや近づくと、2つ目の「カッシーナ」こそ無難に収めたが、3つ目の「コールマン」では明らかにバーに近づきすぎ、車輪につなげることができなかった。
一般的に、鉄棒でバーに近づいてしまう最大の原因は、「落下への不安」とされている。であれば、内村はなぜ不安を感じたのか。
水鳥寿思・男子ナショナルチーム監督が指摘したのは、「跳馬に気を取られるあまり、他の種目に影響が出ている」ということだ。
水鳥監督によれば、3月に行なったナショナル合宿で、内村はかなり良い練習ができていたという。これに関しては森泉コーチも「合宿の時点ではさすが内村だと思うような練習ぶりだった」と見解が一致していた。
ところが、試合では勝手が違った。
水鳥監督は「跳馬に引っ張られている感じがあったことで、頭もかなり疲れていたのだと思う」と内村の内面をおもんぱかった。現地に着いてからの練習が思うようにはかどらなかったことで跳馬への恐怖が膨らみ、それによって他の種目への意識が減ってしまったのではないかという分析である。