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ホークス日本一「陰のMVP」中村晃。
長距離砲への変身、本塁打後の涙。 

text by

田尻耕太郎

田尻耕太郎Kotaro Tajiri

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photograph byHideki Sugiyama

posted2017/11/08 11:00

ホークス日本一「陰のMVP」中村晃。長距離砲への変身、本塁打後の涙。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

日本シリーズでは6試合に出場し7四球。選球眼のよさでもベイスターズの投手を苦しめた。

高校時代は「東の中村晃、西の中田翔」だった。

 この勝利で、CSの流れは変わった。'07年にCSという名称で、両リーグが揃ってポストシーズン制度を始めて以来、パ・リーグでは初戦黒星からの日本シリーズ進出例は昨年までの10年間で一度もなかったが、「突破率0%」からの大逆襲が始まる。

 第4戦もホークスが連勝。中村晃はまたしても決勝ホームランを放った。1点ビハインドの6回裏、内川のアーチで追いついた直後に、2者連続本塁打を右翼席へ叩き込んで勝ち越し。2試合連続での決勝弾はCS史上初の快挙だった。

 この秋、中村晃はホームランバッターと化していた。

 今シーズン中には6本塁打しか打っていない。シーズン2桁本塁打の経験は一度もなく、プロ通算23発である。

 高校時代はスラッガーとして名を馳せた。帝京高校で1年生から4番を打ち、高校通算60本塁打を記録した。同世代には中田翔がおり、「東の中村、西の中田」と並び称された。

 しかし、プロ入り後は身長175cmと小柄な体格もあり、安打製造機となって活躍を続けてきた。

長距離砲になれないと諦めた男が心構えを変えた。

 実は、ポストシーズンの中村晃には、大きな変化があった。

 中村晃はふだん、バットを一握りほど短く持って構えるのだが、いずれの一発の時もグリップ一杯まで長く持って打席に立っていた。

「8月の終わりからです。大きな当たりを飛ばそうと自分の中で思って、長く持つようにしました」

 プロでは長距離砲にはなれないと入団後すぐに諦めた男が、心構えを変えていた。

 今年、中村晃はバッティングで苦しんだ。'13年から3年連続で打率3割をマーク。昨年は.287で記録が途絶えたが、「打率よりもこだわっている」という出塁率で初めての4割超(.416)という結果に十分納得していた。

【次ページ】 打順や守備位置が変わっても、全く愚痴らない。

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