錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
復帰したフェデラーに倣って……。
錦織圭、右手首ケガの背景と重大性。
posted2017/08/22 11:00
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Hiromasa Mano
トップ10のうち7人、〈ビッグ4〉のうち3人が欠場したシンシナティ・マスターズは、26歳のグリゴール・ディミトロフのマスターズ初優勝で幕を下ろした。
これまで約10年間、マスターズ1000のタイトルはビッグ4にほぼ独占されてきたが、前の週にモントリオールで今季2度目のマスターズ優勝を果たした20歳のアレクサンダー・ズベレフといい、今回のディミトロフといい、10代の頃から才能を高く買われていた若いスターたちが、ツアーの異変の中でしっかりとそのチャンスを生かしている。
本来なら、その中に錦織圭がいなくてはいけなかった。
ウィンブルドンのあとに続けて年内いっぱいの活動休止を発表したノバク・ジョコビッチとスタン・ワウリンカに、まさか錦織が加わるかたちになるとは……。
モントリオールの初戦で敗れた翌週、次のマスターズの舞台であるシンシナティでの練習中に右手首を負傷。同大会を欠場し、全米オープンに間に合うかと心配されていたが、全米どころか2017年の残り全ての出場予定大会を欠場することになった。
「好調時こそケガは起こりやすい」
ジョコビッチらの離脱についてモントリオールで聞かれたときは、「あんなに強かったジョコがケガでいなくなったのは寂しいけど、若くて強い選手がたくさん出てきて、もちろん自分たちにもチャンスは大きくなっていると思う」と語っていた。
しかし今季調子に乗り切れない錦織は、残念ながらビッグ4の崩れた勢力構造の中で優勝する勢いに欠け、さらにはシーズン終盤にかけるはずだったわずかな望みも断たれてしまったのだ。テニスでよく使われる〈流れ〉とは、こういうことなのだろうか……。
しかし、たとえば昨年の楽天オープンの2回戦で、すばらしい立ち上がりの中で突然臀部のあたりを痛めて途中棄権となったとき、「好調時こそケガは起こりやすい」という分析を元プレーヤーやコーチの口から何度か聞いたことを思い出す。
結局、ケガはいつどんなときでも起こるし、どんな一流でもケガを経験していない選手はいないのである。