錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
復帰したフェデラーに倣って……。
錦織圭、右手首ケガの背景と重大性。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2017/08/22 11:00
これまでも幾多のケガや不調を乗り越えてきた錦織。きっと……今回のケガも乗り越えて、私たちファンに再び笑顔を見せてくれると信じたい。
手首の故障で有名なデルポトロの例を見ると……。
パワー化した現代のテニスではなおさら手首の負担が高まっている。パワーヒッターのみならず、同時に、手首の操作の加減でショットのバリエーションを生み出す技巧派にとっても、手首の大けがは、それこそ致命的である。
手首の故障と聞いて真っ先に思い浮かぶのはファンマルティン・デルポトロだ。
20歳だった2009年に全米オープンを制覇し、2010年には世界ランク4位にまで上っていたパワーヒッターは、同年に右手首のケガから手術を決断し、9カ月間戦列を離れた。2010年後半に復帰し、一時は500位近くまで落としたランキングを自己最高の4位に戻すまでに約4年を費やしたというのに、2014年に今度は左の手首のケガでまた手術。約1年で一度ツアー復帰したものの一時的なもので、次にツアーに戻って来るまでさらに1年の時間を要した。その間に再び左手首を手術している。
昨年初めの復帰は1000位以下からの挑戦だった。そこからほとんどフル出場してはいるが、ランキングを自己最高に近いところまで戻すのに意外と時間がかかっており、二度目の復帰後、トップ30前後からまだ抜け出せずにいる。
利き腕でない左手首ではあるが、昨年の復帰後、3回戦で敗れたウィンブルドンでもまだバックハンドに対する不安を口にしていた。
「思いきり打つのが怖いんだ。100パーセントに戻るにはまだまだ長い道のりだと思う。毎日2~3時間も手首のケアに費やすのはすごく大変だし、試合が終わったときにはどっと疲れが出る」
それでも、またテニスができているという幸せと、少しずつでも回復しているという実感が、モチベーションであり続けているという。
無敵を誇ったジョコビッチでさえ、休養宣言を。
そのデルポトロとリオ五輪の1回戦で対戦して敗れたジョコビッチは、その数日前にテニス人生で初めて手首を痛めていた。
のちにこう振り返っている。
「彼の気持ちがわかったような気がしたよ。テニスプレーヤーにとってすごく大事なところを痛めて、何年もの間、戦えなかった彼の気持ちがね」
ジョコビッチの手首のケガはその後、肘へと連鎖し、長く苦しんだ挙げ句に今回の休養宣言となった。