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打たれてニヤリと笑う男・武田翔太。
WBCで輝く将棋好きの“逆算力”。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

PROFILE

photograph byNaoya Sanuki

posted2017/02/22 11:30

打たれてニヤリと笑う男・武田翔太。WBCで輝く将棋好きの“逆算力”。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

これまで、日本代表投手として幾度も招集されている武田。日の丸のユニフォームがこれほど似合う投手もいない。

先を読む力は、有段者の父親から学んだ将棋から。

 相手が左打者であれば、カーブのコースを変えて引っ張らせるように攻めていく。あるいは、得意である横のスライダーとのコンビネーションでねじ伏せればいい――。

 この武田の深謀は、パワーヒッターぞろいの海外選手にはより効力を発揮するだろう。

 侍ジャパンでの登板を通じて「外国人はパワーがあるけど、打ち損じも多い」と身をもって体験した武田にとって、まさにおあつらえ向きの攻略法でもあるのだ。

 選手によっては配球の妙を隠したがるものだが、武田は“ネタバレ”を深く意識しない。少年時代に培われた能力が、マウンドでのパフォーマンスに発揮されるからである。

「先を読む力はあるほうだと思います。将棋は役に立っていますね」

 父親が有段者だったこともあり、小学生の頃から将棋が身近にあった。父との対局に負ける日々。

「次こそは勝つ」

 その経験が、武田に先を読む力を養わせていった。

 中学時代には将棋部の生徒を全員打ち負かし、「俺に勝ったらクラス全員にご飯をおごる」と豪語した担任の教師をも圧倒したエピソードを持つ。

「大事な場面で打ち取るために、ここでは打たせておく」

「将棋で大切なのは駆け引きじゃないですか。相手を追い詰めるために『この一手は、あえて簡単にいこう』とか。自分に4、5通りの詰め方があるとすれば、相手にも同じ数だけの逃げ方があるもんなんですよ。だから、さらにその先を読んで逃がさないようにするというか。

 そういう考え方は野球にも生かされていると思いますね。

 さっきのカーブの話で言えば、『大事な場面でしっかり打ち取るために、ここでは打たせておこう』って餌を撒くことはよくやりますからね」

【次ページ】 「重圧というより責任感ですかね」

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