野球クロスロードBACK NUMBER
打たれてニヤリと笑う男・武田翔太。
WBCで輝く将棋好きの“逆算力”。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNaoya Sanuki
posted2017/02/22 11:30
これまで、日本代表投手として幾度も招集されている武田。日の丸のユニフォームがこれほど似合う投手もいない。
注目のカーブは「決め球」ではなく「誘い球」。
2年連続2けた勝利。次代のソフトバンクのエースと呼ばれる右腕には、その期待に応えられるだけの武器が存在する。
それこそが、武田を一躍メジャーにした球種、カーブである。
球速の幅は110キロから124キロ。武田いわく「ボールの切り方はスライダー」と言うその変化球は、ふわりとボールが上昇したかと思えば、打者の手元で鋭く落ちる。周囲はこの変化球を、ウイニングショットと言わんばかりに称賛するが、本人からすれば「あまり得意ではない球種」だという。
「今だから言えますけどね。一番得意なのは、横のスライダーなんですよ。カーブの被打率はあんまりよくないんで。別に打たれてもいいと思っているんですけど」
打たれてもいい――武田はこのカーブを、シーズン中でも「決め球」ではなく「誘い球」として度々活用してきた。
キャッチャーと相談して「わざとヒットを打たせる」。
右打者と対戦する。右投手である武田が投じるカーブは、内角から真ん中付近へ軌道を描く。球速はストレートより20キロ以上遅い。それが、相手の反応を誘発するのだ。
サードゴロならベスト。
三塁線のファウルでもカウントを稼げる。
自分のチームが優位に試合を運べているのなら、最悪、レフトへの安打や本塁打でも構わない。
ここで重要なのは、相手に「引っ張らせること」だ。
武田が解説する。
「もし、カーブを外角に投げてしまったら、調子がいいバッターならライトに流されてしまいます。でも、うまく真ん中低めに投げればほとんどのバッターは引っ張ります。調子がいい選手でも体を開いて打ちにくるので、これでだいたいはフォームが崩れます。
シーズンでわざとヒットを打たせると、ベンチでは『なんで打たせるんだ?』と思う人もいたでしょうけど、キャッチャーと相談してやっていることなんで」