フランス・フットボール通信BACK NUMBER

FIFAランク112位でベスト8へ下克上!
アイスランド代表・グンナルソンの伝説。
 

text by

フィリップ・オクレール

フィリップ・オクレールPhilippe Auclair

PROFILE

photograph byPIERRE LAHALLE

posted2017/01/17 11:00

FIFAランク112位でベスト8へ下克上!アイスランド代表・グンナルソンの伝説。<Number Web> photograph by PIERRE LAHALLE

アイスランドのチームを象徴するような闘志みなぎるプレーで、キャプテンとしてチームを力強く牽引したグンナルソン(左)。

他のチームがバイキング・クラップを真似すること。

「僕らはフランスまで行って国のために戦った。それだけでも凄いことだ。僕のこれまでのキャリアの中で匹敵するものは何もないし、これ以上に気持ちの高ぶりも感じたことはない。僕らはすべてを捧げ、捧げた以上のものを受け取った。それが信じられない。

 それから機上で見た丘に着いた。少し前には誰もいなかったのに、そこは人で埋め尽くされていた。自分の目が信じられなかったし言葉もなかった。キャプテンとして僕はスピーチを求められたけど、頭が真っ白になり用意していた言葉をすべて忘れてしまった。『大会中のサポートに心から感謝します。ありがとう』としか言えなかった。凄く後悔しているよ。もっといろいろ言いたかったのに……」

――ファンは分かってくれたのでは?

「その通りで、最後のバイキング・クラップを一緒にやった。これまでのどれよりも印象深く鳥肌が立った」

――他のチームが今、バイキング・クラップを真似ていることについてはどうですか?

「あれは僕らが発明したわけじゃない。すでにあるものをやっただけだ。だから誰かが自分たちに合った別のバージョンを考えついたならば、別にいいと思うよ。

 でも僕自身は、誰彼かまわず一緒にはできない。僕やチームメイト、サポーターにとってそれはありえない。だからこそオーストリアに勝ってグループリーグを突破したとき、僕らもクラップに加わった。

 サポーターは5~6年前からクラップを始めていたけど、僕らが一緒にやることは1度としてなかった。でもあのときはこう思ったんだ。『彼らと気持ちがひとつであることを示すために、僕らも何かやらなければいけない』と。

 さっきも言ったけど、スタンドを見ると幼馴染が太鼓を叩いている。彼の方に向かいながら自然とクラップを始めていた。周囲の誰もがそれに加わった」

「でも何があろうと、人々は2016年を忘れない」

――大会の後はどのぐらいアイスランドに滞在しましたか?

「48時間で、それ以上ではなかった。家族と(2歳の)息子に会った後、すぐに友人たちとアメリカに5日間のバカンスに出かけた。ゴルフ三昧の日々の後、レイキャビクに戻って1週間を過ごし、カーディフで練習を再開した」

――帰国の後は、人々のあなたを見る目が変わりましたか?

「少し変わった。髭もあまり顔を隠す役には立たないよ(爆笑)。新たな敬意のようなものを感じる。このEUROのことは、これから長く語られるだろう……。ロシアワールドカップ予選がどうなるかはわからない。でも何があろうと、人々は2016年を忘れない。

 僕らのような国でも、大きな大会に出場してそこで何かを成し遂げられると証明した。僕はサッカー選手を目指すすべての人々にこう言いたい。『決して弱すぎることはない』と。自分にできることをおこない、戦術もしっかりしていればチャンスは必ずやって来る」

【次ページ】 所属するカーディフのファンが示した反応とは?

BACK 1 2 3 4 5 NEXT
アーロン・グンナルソン

海外サッカーの前後の記事

ページトップ