フランス・フットボール通信BACK NUMBER
FIFAランク112位でベスト8へ下克上!
アイスランド代表・グンナルソンの伝説。
posted2017/01/17 11:00
text by
フィリップ・オクレールPhilippe Auclair
photograph by
PIERRE LAHALLE
いわゆる小国の躍進が目立ったEURO2016で、象徴的ともいえる存在となったのがアイスランド代表だった。
2012年にはFIFAランキング112位に過ぎなかったアイスランドは、予選グループAでオランダ、トルコを抑えチェコに次ぐ2位でフランスでの本大会出場を決めると、そこでもポルトガル、ハンガリーに引き分け、オーストリアを破ってラウンド16に進出し、さらにはイングランドを下してベスト8にコマを進めたのだった。
スターは誰もいない。全員がチームのために労を惜しまず戦う。そのコレクティブな精神とともに、アイスランドを有名にしたのがサポーターとの一体感だった。とりわけ試合後に選手とスタンドのサポーターが一緒になっておこなう“バイキング・クラップ”は、世界中に強烈な印象を与えた。
『フランス・フットボール』誌の2016年を締めくくる号(12月20日発売)で、フィリップ・オクレール記者がカーディフまで出向き、キャプテンであるアーロン・グンナルソン(27歳)の本音に迫った。
監修:田村修一
弱小国でも勝てる、と僕らは証明した。
――EURO2016で最も印象的なシーンのひとつが、アイスランド代表の母国への凱旋風景でした。どんな思い出がありますか?
「言葉で表すのは難しい。たぶん誇りだろうか……。EUROに出場した誇り。僕らのような小さな国が、オランダ(2勝)とチェコ(1勝1敗)を破って本大会に到達した。それだけでも驚くべき偉業だ。プレッシャーはまったく感じなかった。ところが大会に入って最初の練習でファンの視線を浴びて『畜生、身体が重いぜ』となった(笑)。
初戦のポルトガル戦に引き分けた(1-1)後のことを覚えているかい。まるで何万光年の彼方にまで行ってしまった気分だった。先制されても決して諦めなかった。それが長年培われてきた僕らのメンタリティであるからだ。弱小国であっても戦術的によく組織され、11人対11人の戦いになれば何かができることを僕らは証明した」
――誰もがそう言いますが、違いは、あなた方はそれを実際に実現したわけで……。
「違いは僕らがそれを本当に信じたことだ。サプライズを起こせる確信があった。選手はひとりの例外もなく、自分に何が求められているかを理解していた。誰ひとりとして、あの大会を個人のアピールの場とは考えなかった。国のために戦う。そして一緒に行けるところまで行く。『一緒に』というのは、サポーターとともにということでもあった」