フランス・フットボール通信BACK NUMBER
FIFAランク112位でベスト8へ下克上!
アイスランド代表・グンナルソンの伝説。
text by
フィリップ・オクレールPhilippe Auclair
photograph byPIERRE LAHALLE
posted2017/01/17 11:00
アイスランドのチームを象徴するような闘志みなぎるプレーで、キャプテンとしてチームを力強く牽引したグンナルソン(左)。
所属するカーディフのファンが示した反応とは?
――ではその敬意から、何か具体的な恩恵はありましたか?
「まったく何もない。選手もサポーターもお互いがお互いを知っている。彼らは僕らがすべての試合には勝てないことをわかっているし、ひたむきに戦っていることも良く知っている。だから相互作用や交流が生まれ、彼らが僕らを支え、僕らは彼らのためにプレーする。溝ができたことは1度もない。このかけがえのない結びつきこそが、チームがこれからも躍進していくために守っていかねばらなないことなんだ」
――それでは5年間在籍しているカーディフに戻ったときにも、人々のあなたを見る目は変わりましたか?
「カーディフ・シティには多くのイングランド人選手が所属し(13人)、僕らはイングランドをラウンド16で破った。反応があったのは主にクラブのサポーターだった。勝利を祝福してくれたり、バイキング・クラップをやるように求めたり。彼らはウェールズが、グループリーグでイングランドを上回ったことを喜んでいたけど、アイスランドがイングランドに勝ったのはそれ以上の喜びだった。それだけライバル意識は強い」
――チームメイトはどうでしたか?
「ほとんど何もなかった。僕はシーズン前に合流してすぐにトレーニングを始めた。新人じゃないし、みんな僕が誰か知っている。『よくやった(Well done)』とは言われたけど、あとはもう練習。そんなものだろう」
サポーターの存在も、チーム同様長く記憶に残るだろう。
――私たちは今、カーディフの中心街のカフェにいますが、誰もあなたに関心を示しません。あなたは家具のひとつでしょうか?
「カーディフはアイスランドよりずっと大きいからな(笑)。僕もその他大勢のひとりさ。ときに写真を求められることもあるけど、まあそれはそれ。家族と僕は街から離れた村に住んでいる。とても静かなところで、一家の父親としてそこで過ごす時間をとても大切にしている」
――大会の後にさらにタトゥーを増やしたのでは?
「背中にアイスランド国旗を描いた。僕はアイスランド人であることを強く誇りに思っていて、同じように愛国心が強いウェールズに住んでいるのは悪くない。僕らはバイキングの末裔だ。自分たちの伝統と文化、そしてサポーターが大会の間、僕らを支えてくれた。二人三脚みたいなもので、サポーターもチーム同様に長く人々の記憶に残るだろう」
――CMの依頼はありましたか。髭を剃ることを条件に、カミソリ会社が莫大な額のオファーをしたと聞きましたが。
「それは全然違う。アイスランドのメディアはそんな風には騒がない。広告にしても、マーケットの規模が違って、人口わずか30万人に過ぎないのだからフランスやイタリア、イングランドと比べると、動いている金の額が比べ物にならないよ」