“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
青森山田が、ユース年代の日本一に!
高校サッカー部がJユースに勝った背景。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJiro Natsume
posted2016/12/20 17:00
レアル・マドリーとの一戦で世界中で注目された柴崎岳の母校でもある青森山田。チャンピオンシップ制覇の次は、2冠となる高校選手権制覇に臨む。
「勝利」と「育成」の両立は可能なのか?
要は守備一辺倒では勝てないし、自分達のスタイル(理想)に固執し続けても勝てない、ということ。
黒田監督はプレミアリーグ創設当初、この考え方のどちらを取るべきか、そのバランスをどう取れば良いのかずいぶん試行錯誤したのだという。ただ「勝てば良い」という単純な考え方はせず、「育成」を見据えたサッカー哲学が、そのためには必要だった。
「目先の勝利ばかりを求めても選手達は伸びない。いかに選手達を伸ばし、自分達が主導権を握れるサッカーをしながら、さらに結果も掴めるか。そこを指導者が考えないといけない」
高校サッカーにはプレミアリーグだけでなく、夏のインターハイ、冬の高校選手権がある。プレミアリーグは相手が強豪だらけだが、高体連の大会では自分達が格上になることが多い。そうなると相手チームの戦い方が、180度変わってくる。
プレミアリーグでは守る時間が長く、少ない攻撃のチャンスをモノにする戦い方を選んでも、高体連の大会になった途端に、今度はその戦い方を相手がやってくるという事態となる。
この矛盾に戸惑い、プレミアリーグでは良い成績だった高体連のチームが、高校選手権の予選で早々に姿を消すことも多かったのだという。
「インターハイ、プレミア、選手権。この変化の中でいかに自分達が柔軟性を持って戦えるか。相手の状況を見て、戦術を変えながら使い分けられるか。そうすれば選手達の考える力も養えるし、状況に適応出来る選手になる」
プレミアでも高校選手権でも上位についた昨季。
黒田監督は、チーム戦術のベースとなる守備をしっかりと選手に落とし込みながらも、ではどうやって攻めるか、攻めが滞ったらどうすべきか、さらに多彩な崩しのバリエーションをどう持てるか――と、工夫に工夫を重ねてチーム作りを行ってきた。
そして、昨年はプレミアイーストで2位に入り、高校選手権でもベスト4に入ると、MF神谷優太(湘南ベルマーレ)、DF常田克人(ベガルタ仙台)と2人のJリーガーを送り出した。
そして今年はさらにその質が上がった。実力と個性を兼ね備えた選手が多く育ち、黒田監督の哲学がよりピッチで表現できるようになった。
DFラインの多くの主力メンバーが卒業して昨年のチームから大幅に変わったが、「守備のベースの部分だけは意識させました。どんな状況でも粘り強くゴールを隠しながら、プレスに行くところはしっかりと行く。あくまで相手に脅威を与える守備をしていかないといけない」と、積極的な守備をきちんと受け継がせている。