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松田宣浩が踏み出すべき最初の一歩。
メジャー挑戦の“夢”と“ビジネス”。 

text by

ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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photograph byNanae Susuki

posted2015/11/18 10:40

松田宣浩が踏み出すべき最初の一歩。メジャー挑戦の“夢”と“ビジネス”。<Number Web> photograph by Nanae Susuki

海外FAを宣言した松田宣浩。2015年シーズンは35本塁打を記録。プレミア12でも1本塁打ほか、活躍を見せる。

32歳での「メジャー挑戦」の難しい部分は?

 複数のスポーツ新聞によると、今季2億2000万円+出来高だった松田に対し、前所属球団の福岡ソフトバンクは4年16億円から20億円の複数年契約を用意しているという。平均年俸は4億から5億である。「それ以下の評価ならメジャー挑戦しない」というのなら難しい。

 当時26歳で「メジャー挑戦」した西岡剛(現阪神)は3年925万ドル(4年目オプション付)、日本円で平均約3億7000万円、同30歳の中島裕之(現オリックス)は2年650万ドル、日本円で平均約3億9000万だったのだから、32歳の日本人内野手である松田にソフトバンクと同等の契約を提示するメジャー球団が現れたとしたら、少し驚きだ。

 だが、32歳での「メジャー挑戦」に難しい部分があるとすれば、それは「日本の球団より良い契約が出来ない」ということではなく、「失敗する余地があまり残されていない」からではないか。

 日本のプロ野球選手は新人資格はあっても、ドラフトやドラフト外で入団した新人ではない。獲得球団には彼らをマイナーで育成するつもりはなく、すぐさま結果を出さなければ「メジャーで通用しない」と見限る。それはマイナー暮らしを強いられた西岡や中島の例を見ても明らかで、そう考えると「メジャー挑戦」を宣言しながら日本球界に復帰するのがビジネス上の選択としては正しいのかも知れない。

「メジャー挑戦」に隠された、ビジネス上の“夢”。

 ただし、「メジャー挑戦」には、ビジネス上の“夢”も隠されている。

 たとえば今オフ、FAとなった岩隈久志投手は11月6日、前所属球団のマリナーズから再契約を前提にクオリファイング・オファー(以下QO)をされた(13日に拒否)。今シーズンの年俸上位125選手の平均額で割り出されるその額は1580万ドルで、1ドル120円換算なら実に19億円(以下同様)にものぼる。

 年俸19億円というのは、日本のプロ野球では(今のところ)考えられない数字であるが、だから岩隈の「メジャー挑戦」にビジネス上の価値があったと言いたいわけではない。大事なのは、そこに至るまでのプロセスだ。

 岩隈が2012年に30歳でマリナーズと交わした契約は1年150万ドル(1億8000万円)だった。日本でならいい方かも知れないが、メジャーの先発ローテーションの一角を占める投手としては低い。彼のメジャーにおける最初の「評価」は、契約内容だけを見れば「先発5番手かロング・リリーバー」というものだった。それでも彼は「最初の一歩」を踏み出した。その勇気ある一歩は、その年のオフ、マリナーズと交わした2年1400万ドル+3年目オプション(平均年俸700万ドル=8億4000万円)に繋がった。言うまでもないことだが、今回のQO=単年19億円提示は彼がその後も活躍した証である。

【次ページ】 斎藤隆のサクセス・ストーリー。

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