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M・デムーロとルメール、JRA騎手に。
通年参戦で日本競馬はどう変わる? 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byYuji Takahashi

posted2015/02/07 11:00

M・デムーロとルメール、JRA騎手に。通年参戦で日本競馬はどう変わる?<Number Web> photograph by Yuji Takahashi

JRA騎手試験に合格したクリストフ・ルメール。すでにJRA・GI5勝を含む245勝を挙げている“新人”ジョッキーである。

もともと「腰掛け」というつもりではなかった二人。

 JRAは前回('14年度)から、筆記による一次試験を英語でも受験できるようにし、外国人騎手に門戸を開いた。前回、デムーロはその一次で不合格となったが、2度目のチャレンジで、日本語による口頭試問などの二次試験もパスし、晴れて「日本の騎手」となった。

 デムーロは非常に「日本愛」の強い男だ。'11年のドバイワールドカップの追い切り後の会見で、欧米メディアに「日本で何年乗っているのか」と訊かれたら、間髪を容れず「13年」と答えた。指折り数えなくても、「第二の故郷」で乗った年数が頭から離れることはない。震災と原発事故の被災地である福島県相馬市を訪ねたり、'12年の天皇賞・秋をエイシンフラッシュで勝ったあと、スタンド前で下馬して天皇皇后両陛下に最敬礼したりと、日本人以上に「日本の心」を持っている。

 それに加えて、母国イタリアの競馬は資金面の問題などからレベルが下がり、ダービーがGIIに格下げされてしまうなど、きわめて厳しい状況にある。

 そうした事情があるだけに、日本で乗ることに関しては、もともと「腰掛け」だとか「出稼ぎ」という意識ではなかった。

 弟のクリスチャン・デムーロも、今ちょうど短期免許で来日中だ。自分同様若いときから日本で乗っている弟のためにも、通年免許を取得して成功する道を確立したいという気持ちは強いだろう。

名手ルメールの、今まで以上にすごみのある騎乗が見られるか。

 ルメールは、先述したパリ大賞のほか、仏ダービー、仏オークス、アスタルテ賞、ムーランドロンシャン賞、さらにイギリスの1000ギニー、2000ギニー、アメリカのブリーダーズカップジュヴェナイルフィリーズターフなど、欧米のGIをいくつも勝っている。紛れもない世界的名手であるが、母国フランスでのリーディング(勝ち鞍)では、ここ数年、トップのクリストフ・スミヨンだけではなく、同じく短期免許で来日しているマキシム・ギュイヨンやイオリッツ・メンディザバルらにもまったく及ばないシーズンがつづいている。しかし、日本の関係者やファンのイメージでは、ギュイヨンやメンディザバルよりルメールのほうがずっと格上だし、実際、日本での成績はいい。

 彼にとって、日本は、どこよりも自分を輝かせてくれる舞台だ。フランスで築いてきたさまざまなものをなげうって勝負をかけてくる。その覚悟が、これまで以上に凄みのある騎乗となって現れることは間違いない。

【次ページ】 外国人騎手が「次」を見据えられるようになったら?

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