沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
M・デムーロとルメール、JRA騎手に。
通年参戦で日本競馬はどう変わる?
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2015/02/07 11:00
JRA騎手試験に合格したクリストフ・ルメール。すでにJRA・GI5勝を含む245勝を挙げている“新人”ジョッキーである。
外国人騎手が「次」を見据えられるようになったら?
短期免許で乗る外国人騎手は、確かに「上手いな」と唸らされることもあるが、それ以上に、とにかく目先のレースを勝ちに行こうとする騎乗が目立つように思われた。「ここで先行したら勝つ可能性は上がるが、距離が延びる次走以降では掛かってしまう恐れがある」といった場合、次もまた乗れる日本のトップジョッキーなら馬のリズムを優先し、走りを教えながら騎乗する。が、長くても3カ月しかいない外国人騎手は、「次」ではなく「今」結果を出そうとしがちだ。
ところが、通年で乗れるようになるデムーロとルメールは、「次」を見据えたうえで、「今」どう乗るのがベストかを考えて騎乗できるようになる。
この変化は大きい。
若手の日本人騎手に訪れる、受難の時代。
デムーロとルメール。ともに30代半ばと、もっとも脂の乗った世界の名手がレギュラーとなる日本の騎手界は、間違いなくレベルが上がる。その結果、競技としての競馬のクオリティも高まるだろう。
ファンとしては歓迎である。
だが、若手の日本人騎手、特に、今回の合格発表後、ルメールと一緒に写真におさまった新人たちにとっては受難の時代もいいところだ。
'94年に短期免許で外国人騎手が来日するようになり、'03年、笠松に所属していた安藤勝己がJRAに移籍したのを皮切りに、小牧太、岩田康誠、内田博幸、戸崎圭太といった地方のトップジョッキーが移籍してくるようになった。ただでさえ競争が熾烈になってきていたところにデムーロとルメールが加わり、今後さらに外国人が参入してくるだろうから、生き残るのは大変である。
デビューしたばかりの騎手には減量の特典があるのだが、3kg減で乗ることができる期間を今より長くするなどしないと、若手が騎乗馬を確保するのが難しくなるのではないか。何度も繰り返し戦ったうえで敗れるのなら本人も周りも納得できるが、戦うチャンスすら与えられないような状況になってはいけない。