Jをめぐる冒険BACK NUMBER
7月全勝の川崎Fが確立した思想。
“繋ぐ”ではなく“崩す”から考える。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2014/08/01 10:30
川崎の攻撃を指揮する中村憲剛。しかし、彼のパスや展開力だけに頼るのではなく、前線の動き出しや連動性こそが好調の理由だろう。
ポゼッションスタイルと「仕掛け」の罠。
ここで触れておきたいのは、パスを繋いで主導権を握ろうとするチームが陥りがちな“罠”についてだ。
いわゆるポゼッションスタイルの構築に取り組むチームは、得てして「足元で繋いでいるだけ」で、「なかなか仕掛けられない」「一向に崩せない」という状態に陥ってしまうことがある。例えば、昨季までのショートカウンターを主体にした攻撃から転換を図っている最中という新潟も今、そうした“罠”に陥っているようだった。
パスを繋げても、ゴール前の危険なエリアになかなか入れない。受け手の動きが少ないから出し手は出せず、出し手が出さないから、受け手はなお動けないという悪循環。結果として新潟は、ここ3試合いずれも0-1で3連敗を喫してしまった。成岡翔の分析はこうだ。
「去年のように高い位置で奪ってショートカウンターを繰り出すならスペースもあるし、ボールを奪った勢いで攻められるけど、今は自分たちが回しながら探っている状態で噛み合ってない。全部が全部、安パイのプレーになっている」
「繋ぐ」ではなく「崩す」からスタートする川崎。
一方、川崎はそうした“罠”とは無縁だ。風間八宏監督就任3年目を迎え、継続という点で一日の長があるのは間違いないが、そもそものスタート地点が違うのだ。川崎は「パスを繋ぐ」ところからチーム作りをスタートさせておらず、「相手を崩す」「ゴールを奪う」という点から全てが始まっている。
一見パスを回して相手を走らせているような時間帯でも、大久保嘉人や小林悠、森谷賢太郎らは絶えずマークを外す動きを繰り返し、中村や大島らがその瞬間にパスを入れようと狙っている。新潟戦でも、相手のディフェンスラインが高ければすかさず小林や森谷が裏を狙い、そこにボールが送られた。バイタルエリアが空けば大久保が下りてきて、その足元に縦パスがスパンと入る。そんなチームについて風間監督が言う。
「ボールを回すのが目的じゃない。うちはみんな答えを持って回している。答えを持たずに回していては、相手の餌食になるだけだから」
川崎がこだわっているのは「何を強みにして戦うか」「どうやって勝つか」というチームとしてのスタイルだ。