欧州CL通信BACK NUMBER
CL敗退、バルサ黄金期の終わり。
時代はペップの“真クライフイズム”へ。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byREUTERS/AFLO
posted2014/04/11 15:00
バルサはボール保持率ではアトレティコを上回っていたのだが……。メッシの運動量も極端に少なく、イニエスタの途中交代も議論を呼ぶこととなった。
全体像を描く“設計者”不在のバルサ。
2012年5月にペップ・グアルディオラがバルサを去ったとき、すでに黄金時代の終焉が危惧されていたが、チームの“中央演算装置”であるシャビ、イニエスタ、メッシの3人がいればペップモデルは持続できると思われた。
しかし、やはり全体像を描く“設計者”の存在は大きかった。
ペップのバイエルンにおける練習を見ると、そのサッカーが選手個々の献身と規律によって成り立っていることがわかる。ペップが全身から情熱をたぎらせて基本ルールを全員に徹底させ、ロッベンのような個人主義者が拒否反応を示しても、対話によって理解させる。ペップの選手としての輝かしい実績と、攻撃サッカーにかける揺るぎない信念が選手たちの心を動かしている。
それを後任者に真似しろというのは酷な話だ。アトレティコとの第2レグの後半、パスコース作りが一時的に改善した。おそらく現監督のマルティーノもどこに問題があるか気がついており、ハーフタイムに指示したのだろう。だが、それは長続きしなかった。すべてを勝ち取った選手たちに納得させて、単純作業を繰り返し実践させるのは、指導法の中で最も難しい部類に入る。
バルサ時代の終焉から、次世代戦術の時代へ。
ただし、黄金時代終焉の原因は“ペップ・ロス”だけにあるわけではない。
ペップと同格のカリスマ性を持った監督が就任すれば、再び黄金時代が訪れるかと言えば、答えはノーだ。すでに現代サッカーは次のステージに移行しようとしている。
そのパイオニアとなっているのが、ペップ率いるバイエルンだ。
結論から書けば、鍵となるのは「ウィングの復権」である。「真のクライフイズムへの回帰」と言い換えてもいい。
21世紀に入ってからの一般的なサッカー観においてウィングは、自分勝手にドリブルばかりして組織を乱し、守備に穴をあける、というネガティブな印象を持たれていただろう。ウィング不要論や絶滅説さえも唱えられていた。
だが、それはクライフが考えるウィング像ではない。4月下旬に二見書房から出版されるクライフ著の『サッカー論』(原題はvoetbal。クライフがオランダで自ら出版社を立ち上げ、育成論・指導論・戦術論・ポジション論・監督論・経営論を語り尽くした本。翻訳は若水大樹氏と筆者)に、こんな記述がある。
「私が多くの指導者をあまり評価していないことは、周知の事実だろう。とくに長年、サッカーが持っていた魅力を失わせようとしているグループを快く思っていない。(中略)ウィンガーというポジションには私が求めるサッカー選手のすべての要素が詰まっており、(中略)彼らが持ち合わせている能力は、とにかくサッカーがうまいということだ」