日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
NZ相手の2失点は偶然ではない。
ザックJが見逃した危険な「予兆」。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2014/03/06 12:35
自ら獲得したPKでゴールを決めた香川真司。マンチェスター・Uでは出場機会が激減し苦しいシーズンを過ごしているが「いい形でマンチェスターに帰れる」と手応えを示した。
4-0になってからこそが、評価対象だったはずが……。
一つの課題をクリアし、次のハードルが「集中力の持続」であった。前半早々に4-0の展開なら、その後トーンダウンするのはよくある話。ここをクリアして、どれだけ叩きのめすことができるか、相手の心を折れるか、が試されていた。むしろ4-0になったその先が、W杯まであと3カ月に迫っているザックジャパンの評価対象と言ってよかった。
2ゴールを挙げた岡崎は、「(対面の)サイドバックは自分に対してガンガン来たので、そこは使いやすかった。裏をまったくケアしてなかった」と語っている。25分までのニュージーランドは、裏に対するケアばかりでなく、縦に入るパスへの対処も甘かった。だが、4点取られてからようやく目覚めた感じが出てきた。前半28分、酒井宏樹からのクロスが大迫勇也に合わず、その流れからカウンターを受ける。日本の攻撃に対応すべく守備ブロックをつくり、出足にも鋭さが出てきた。ここからが本当の勝負だった。
しかしザックジャパンは、ここで畳み掛けることが出来ずに反撃を食らってしまう。
危険なシグナルはあったが、修正する前に失点。
前半39分、日本の右サイドの裏を突くロングボールが送られ、突破してくる191cmの長身ストライカー、クリス・ウッドに酒井宏と山口の2人で対応したのだが、苦し紛れのボールが山口の体に当たったところを拾われ、角度のないところから決められてしまった。
ただその2分前にも、高いポジションを取っていた酒井宏の裏を狙われ、そこからクロスを送られていた。ここでもしチームが危険なシグナルを感じて、対応できていたら……。そう思えたシーンだった。チーム全体が前がかりになっているところを修正する前に、得点に結びつけられてしまったのだ。
後半スタートから、山口&青山のダブルボランチは遠藤保仁と細貝萌のコンビに交代。岡崎は清武弘嗣、酒井宏は酒井高徳に代わった。しかし、彼らも前半終盤からの嫌な流れを断ち切ることはできなかった。3点差が開いている相手の心を折るどころか、むしろ「もっと点が奪えそうだ」というやる気を起こさせてしまった印象を受けた。守備でも、システムを4-1-4-1に近い形にして構えるニュージーランドに、攻撃でも苦しんだ。