日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
イラクを完封もブラジルに通用するか?
求められる“コンフェデ仕様”の守備。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/06/12 11:45
試合後の長友は「今のチームメートは信頼関係もあるし、すごく良い雰囲気のチーム。これをもっと高めていって、世界でも勝てるようなサッカーをしたい」と語った。
日が暮れても、ドーハは生暖かい風が吹いていた。
試合後、アルベルト・ザッケローニはピッチに入って選手たちを出迎えると、興奮気味に声を張り上げた。
「このように勝つことが大事なんだ。いかなる状況であっても、勝ちに結びつけられるのが本当の強さなんだ」と――。
イラク戦に勝って最終予選を終える。これこそが4日後に控えるコンフェデレーションズカップ初戦のブラジル戦につなげるための、指揮官がチームに課したミッションだった。
ひとまず内容は別として、簡単ではなかったミッションをクリアしたことが指揮官を機嫌良くさせていたのかもしれない。オーストラリア戦から先発で5人を入れ替えてきたものの、完全ターンオーバーにしなかったのは“消化試合”とはいえ、勝ちにこだわったからだと言える。
暑さ、強風の風下、モチベーション……耐えに耐えた前半戦。
イラクという相手のほかに「敵」は3つあった。
1つ目は気温35度の立ち込めた暑さ。中東特有の暑さに慣れていない日本のほうが不利であったのは明らかだった。酷暑によって判断力が鈍り、安易なミスが多かった。
2つ目はスタンドに掲げられた国旗が激しく波打つほどの強風。風下に立たされた前半はボールの処理に苦しみ、押し込まれるシーンが目立った。さらに砂まじりの風は選手たちの呼吸を苦しくさせていて、これも慣れという観点で見ればイラクのほうに分があったように思える。イラクにとっては「恵みの風」に違いなかった。
そして3つ目。これは両者平等の条件である前述の2点と決定的に違う。それはこの試合に対するモチベーションだ。
先のオーストラリア戦で既に突破を決めている日本に対し、イラクはW杯出場チケットを手にするにはもう勝利することしか道がないのだ。「気持ち的にも相手が強く来た。(日本は)ふわっとした気持ちで試合に入ったように思えた」と語ったのは長友佑都。
序盤、その差が歴然と出ているような印象を受けた。
暑さ、強風の風下、モチベーション。
加えて個の強さと組織力の2つを兼ね備え、必死になって勝ちにくるイラク。前半、日本が受け身になって戦ってしまうことはある程度、予想できたことではある。しかし彼らは耐えた。耐え切った。イラクがチャンスにミスをして自滅するという“他力”によるものではなく、今野泰幸、伊野波雅彦を中心とした最後の突破を許さない守備の力、すなわち“自力”でゴールを割らせなかった。