日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
イラクを完封もブラジルに通用するか?
求められる“コンフェデ仕様”の守備。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/06/12 11:45
試合後の長友は「今のチームメートは信頼関係もあるし、すごく良い雰囲気のチーム。これをもっと高めていって、世界でも勝てるようなサッカーをしたい」と語った。
徐々に流れを呼び込んだ「最後に仕事をさせない」守備。
パスミス、ボールのコントロールミスが続く悪い流れのなか、前半10分にはボールを奪われてからイラクにゴール前まで迫られながらも、伊野波がかろうじて食い止めた。このシーンが象徴的だったが、押し込まれながらも相手に決定的な形でシュートまで持ち込まれた回数は少ない。「最後に仕事をさせない」守備が、徐々に“モチベーションの差”を埋めていった印象が強い。
開始早々は簡単にクロスを上げられていたが、時間が経つにつれてボールホルダーに対しての素早いチェック、体を寄せる守備が、相手のチャンス拡大を阻止していた。カウンターを食らっても、長友が冷静に対応できていた。
この日、出場停止の長谷部誠に代わってキャプテンマークを巻いた遠藤保仁は、このように前半を振り返る。
「風下に立てば押し込まれるのはある程度仕方がないかなと思っていましたけど、ディフェンス陣も辛抱強く、意思統一できていた。こっちもセンタリングでいい形があったけど、前半は(失点を)ゼロで乗りきろうという意識(が強かった)。試合の立ち上がりは、入り方を間違えないようにしなければと思っていた。何度かミスから危ない場面はあったけど、守備からリズムをつくっていくという戦い方もあるとは思う。辛抱強くやって、チャンスを待つというのはこれからも大事になる」
ボールをサイドに散らし攻略を企てながらも、ゴールに向かって強引な力技で来なかったイラクに助けられた面も大きい。ただ日本の守備の粘り強さが、イラクを“消極的”にさせたとも言える。
追い風となった後半戦。ようやく多彩な攻撃が出てくる。
後半勝負――。
指揮官が指示したのはサイドから攻略すること。
前半の日本は体を張った守備から攻撃に転じる際の迫力が物足りなかった。風下の影響でロングボールを頻繁につかえず、大きな展開ができない。ボランチ、サイドバックも守備のケアでなかなか上がれない。前半26分にボランチの細貝萌が高い位置でボールを持ち、そこからの攻撃で香川真司と清武弘嗣の細かいパスワークでゴールに迫ってはいるものの、トップ下の香川が危険な位置でプレーする場面は限られていた。
だが追い風になる後半に入ると、ようやく攻撃に柔軟性が出てくる。ハーフナー・マイクが競ってサイドの裏に出たボールに長友が走り込むなどして相手ゴールを脅かしていった。