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柿谷曜一朗が“セレッソの8番”に!
Jにおける背番号が持つ、重い意味。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO
posted2013/02/03 08:01
「前任者」の清武(右)から8番を受け継いだ柿谷。海外オファーを蹴っての残留決定は、柿谷のさらなる進化の契機となるか。
イタリアのミランにおける「3」と「6」、同じくナポリの「10」、さらにオランダのアヤックスにおける「14」は、サッカー界でも有名な“永久欠番”の一つである。
パオロ・マルディーニ、フランコ・バレージ、ディエゴ・マラドーナ、そしてヨハン・クライフの栄光を称える永久欠番を持つことは、もちろんクラブにとってもサポーターにとっても栄誉である。彼らは「なぜ欠番なのか」を語り継ぐことで英雄の記憶を永遠のものとし、そうして歴史に重みと威厳を加えていく。
つまり永久欠番は、名選手の記憶を半永久的に刻もうとする冷凍保存システムである。“解凍”する日が来るケースは極めて稀であることから、スポーツ界に根付くこの文化が、いかに広く浸透し、また大切にされてきたかが分かる。
もっとも、英雄の記憶を語り継ぐ方法は“冷凍”することだけではない。
ジョージ・ベスト、ブライアン・ロブソン、エリック・カントナ、デイビッド・ベッカム、クリスティアーノ・ロナウド――。
マンチェスター・ユナイテッドの「7」は、今も脈々とその系譜が受け継がれる伝統のナンバーである。しかし、おそらくこの先も、背番号7が永久欠番となることはない。彼らは「7」を冷凍することなく、それを不可欠なエースナンバーとして大切に次の世代へと受け渡すことで、歴代の英雄の記憶を後世に残そうとしている。
背番号「8」は“ミスター・セレッソ”が受け継ぐ数字。
背番号に関する話題がニュースになるということは、つまりJリーグも、たった20年の歴史とはいえ徐々に“文化”として浸透しつつあるということだろう。
セレッソ大阪の背番号「8」――。
1月30日、2013シーズンの新体制発表イベントで“継承者”としてこの背番号を身にまとった柿谷曜一朗は、偉大なる先人・森島寛晃と600人のサポーターを前に決意を語った。
「(背番号8は)すごく重い。僕がつけていい番号かどうか、自分でも何回も悩みました。でも、森島さんから『つけてくれ』と直接言われた時には、ちょっと泣きそうになるくらい感動しました。この背番号をもらうからには、森島さん、(香川)真司君、キヨ(清武弘嗣)、誰にも負けない8番を自分で作っていきたいと思います」
セレッソ大阪の「8」が持つ意味は、マンチェスター・ユナイテッドの「7」のそれと限りなく近い。額縁に入れて飾るためのものではなく、歴代の“ミスター”たりえる選手の背中に託し、その歴史をつなぐ。だからその継承者として「8」を背負った柿谷の姿を華々しくお披露目することは、セレッソ大阪にとって新たな時代の幕開けを告げる大切な儀式の一つだった。