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ヤクルトの“若手育成路線”は、
プロ野球人気復活の起爆剤となる!! 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2013/01/10 10:31

ヤクルトの“若手育成路線”は、プロ野球人気復活の起爆剤となる!!<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

2008年ドラフト3位で福井商から入団した中村悠平。2軍で着実に実績を積み重ね、昨シーズンから1軍に定着。22歳とまだ若手だが安定した活躍を見せた。

育成路線に舵を切ったパ球団は人気、実力とも上向きに。

 1リーグ制への移行が望めず、観客動員もチーム強化もままならないパ・リーグ各球団は根底から発想の転換を求められた。

 お金をかけずに強化し、それがファンに支持されるチームとはどんなものだろう――その問いに対する答えが現在、上位球団が実践している高校生主体のドラフトとファーム組織の強化という二本柱だと思う。

 観客数が実数発表になった'05年以降、パ・リーグの年間観客動員は順調に推移している。

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'05年=825万2042人(1試合平均2万226人)
'06年=852万9281人(1試合平均2万905人)
'07年=904万6670人(1試合平均2万941人)
'08年=955万5016人(1試合平均2万2118人)
'09年=970万7451人(1試合平均2万2471人)
'10年=983万2981人(1試合平均2万2762人)
'11年=977万7852人(1試合平均2万2634人)
'12年=957万9690人(1試合平均2万2175人)

 過去2年間の漸減状態は気になるが、実数元年の'05年とくらべれば132万人以上増えている。現在の1試合平均2万2175人という観客動員数は昔のパ・リーグを知る人間には、夢のような信じられない数字である。改革はファンの支持を得たのである。

 観客動員の増加とともに色々なことが変わり始めた。とくにそれまで劣勢だった日本シリーズで勝つことが多くなった。再編騒動の'04年以降、パは6勝3敗と大きく勝ち越しているのだ。

育成路線を実践するヤクルトのドラフト戦略とは?

 前置きが長くなった。このパ・リーグのチーム強化システムをセ・リーグで最もよく実践しているのがヤクルト、という話をここからしたい。

'05年 高校生D1巡/村中恭兵(投手・東海大甲府)
          大学・社会人D希望枠/武内晋一(一塁手・早稲田大)
'06年 高校生D1巡/増渕竜義(投手・鷲宮)
          大学・社会人D希望枠/高市俊(投手・青山学院大)
'07年 高校生D1巡/佐藤由規(投手・仙台育英)
          大学・社会人D1巡/加藤幹典(投手・慶応大)

 以上に挙げた'05~'07年の分離ドラフト(高校生ドラフトと大学・社会人ドラフトを分離して行った)をどう分析するか難しいが、'08年以降の育成に重きを置いた指名や増渕(2球団)、佐藤(5球団)を他球団と競合しているのを見れば、軽いノリで指名したのではないことがわかる。

 また、両者をくらべると結果論ではなく当時から高校生の村中、増渕、佐藤のほうに大物感があった。もし統一ドラフトで行われていてもヤクルトスカウト陣は高校生に食指を動かしただろう。

 高校生に重きを置いた指名は、'08年以降の統一ドラフトでも踏襲されていく。次のような選手を立て続けに上位で指名しているのだ。

'08年 1位赤川克紀(宮崎商)、2位八木亮祐(享栄)
'09年 1位中澤雅人(トヨタ自動車)、2位山本哲哉(三菱重工神戸)
'10年 1位山田哲人(履正社)、2位七條祐樹(伯和ビクトリーズ)
'11年 1位川上竜平(光星学院)、2位木谷良平(日本文理大)
'12年 1位石山泰稚(ヤマハ)、2位小川泰弘(創価大)
[註]山田、川上以外はすべて投手

 ヤクルトが過去8年間行ってきた高校生路線、言い換えれば“育成路線”がお分かりいただけると思う。ここで名前を出した高校卒7人のうち村中、増渕、佐藤(由規)、赤川、八木が戦力になっている。そして名前の出なかった山田は次代のショートストップとしてたびたび話題になっている。

【次ページ】 '13年シーズンのヤクルトは球界随一のフレッシュさ!?

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