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阪神の反省は本物だったのか!?
西岡、福留へ無暗に殺到した批判。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2013/01/15 10:30
松の内も明けやらぬ1月5日に入団記者会見をした福留と和田監督。「(大阪のPL学園や社会人野球の日本生命でも)プレーしたことがある関西なので、すんなり入っていけると思いました。(中略)福留が入ってマイナスになったと言われないように頑張ります!」とコメントした福留。
そもそも、批判の矛先が違っているような気がする。
大補強を成功させた阪神タイガースのことだ。
阪神はこのオフ、メジャー帰りの西岡剛(元ツインズ)、福留孝介(元ホワイトソックス)を獲得。さらに、弱点である捕手にオリックスから日高剛をFA補強した。新外国人選手のコンラッドを加え、昨季限りで引退した金本知憲と城島健司の抜けた穴、得点力不足にあえいだ攻撃陣への強化に盤石の態勢を整えているかに見える。
昨秋のドラフトでも、甲子園のスター、藤浪晋太郎と北條史也の両獲りに成功。Bクラスに沈んだ阪神のストーブリーグは充実していたといえる。
だが、この補強、あまり評判が良いというわけではない。
ドラフトの2人はともかくとして、高額契約となった西岡・福留両選手に対してのファンの風当たりが相当にキツいのだ。特に、福留は入団交渉が長引いたことが様々な憶測を呼び、今季活躍しなければ、批判の矢面に立つであろう様相を匂わせている。
確かに、彼らへの批判が分からないわけではない。
メジャーリーグのオールスタープレイヤーでありながら楽天と契約を交わした斎藤隆(元ダイヤモンドバックス)の年俸が3000万(プラス出来高=推定)で、斎藤ほどの活躍をしたとはいえない彼らが、数億の複数年契約を結んだことは「高額過ぎる」印象が拭えないのは事実だ。
しかし、契約というものは本人の希望だけで叶うわけではない。彼らに対してそれだけの評価を下した球団こそが、その責任を負うべきなのだから。
「王道はドラフトで獲得した新人選手を自前で育てること」
費用対効果――。
選手に対しての評価が正当にされた上で契約されているのかどうか。
西岡や福留がバッシングの対象とされてしまう理由の中には、彼ら個人に向けてではない、また別物の問題が見え隠れしているのである。
思い起こすのは昨年6月、大荒れだった阪神の株主総会である。
球団の株主たちは当時の体制への不満をぶちまけた。その様子を伝えた翌日のスポーツ紙には「不良債権」「補強失敗」「育成軽視」という言葉が躍った。わざわざ南球団社長が「チーム作りの王道はドラフトで獲得した新人選手を自前で育てること。それは十二分に認識しています」とコメントしたことも、事の重大さを表していた。